監督がファンと公言するジブリからの影響
「トイ・ストーリー」(1995年)で世界初となる長編フルCGアニメーションを誕生させたピクサー。以来、3DCG技術を駆使して数々の名作が誕生している。本作では、海の中でルカが羊飼いのように魚たちを率いる様子や、大人のシー・モンスターたちが畑仕事のように海藻の種付けをする様子、地上ではイタリアのカラフルな建物がある街並み、パスタやジェラートなどのグルメと、暮らしぶりを生き生きと映し出す。
ただ、アニメ好きならば本作がこれまでのピクサー色と少し違うことに気付くかもしれない。実は、カサローザ監督は大のスタジオジブリ好きを公言しており、手書き制作をするジブリに影響を受け、本作で手書き手法を取り入れたという。
物語前半、ルカとアルベルトはイタリアを代表するスクーター・ベスパを広い世界に連れて行ってくれる乗り物として憧れ、人間界のガラクタを使って手作りするシーンがあるのだが、それを走らせるとき、もちろんエンジンはないので坂を利用して駆け下りると勢い余って海にアルベルトが飛び出すシーンの手足の躍動感ある動き。ほか、水の動きなども2D手法が加わっているようだ。
舞台となる街の名前、ポルトロッソは「紅の豚」(1992年)の主人公ポルコ・ロッソに由来するとも明かされている。ジュリアのぽっちゃりした愛猫が「耳をすませば」(1995年)に登場する野良猫ムーンにどことなく似ている感じもひょっとしたら…。
ジブリ作品では特に「となりのトトロ」が好きだという、カサローザ監督らしいジブリ愛も詰まった映像表現をぜひ堪能してほしい。
「スクリーンで見直したい」という声も!
本作の劇場公開に際し「絶対見に行く」「街並みが美しすぎるのであれを大スクリーンで見られるのうれしい」「映画館で見たら体中の水分無くなるくらい泣くと思う」「スクリーンで見直したい」といった声が上がっている。
ラストのルカ、アルベルトの決断まで進むと、いつしか目頭が熱くなっているはずだ。エンドロール中のその後のルカ&アルベルトたち、またエンドロール後の一幕までお見逃しなく。
同じように海の世界を描いた「ファインディング・ニモ」では大人になって見るとまた共感ポイントが異なって楽しく見られたりもするし、共感を呼び起こす物語性で1つの作品を繰り返し見たくなる魅力にあふれたピクサー作品は、新作を待ちわびるファンも多い。
そんなディズニー&ピクサーの最新作が8月に公開される「インサイド・ヘッド2」だ。同作はピート・ドクターが監督を務めた、少女ライリーの頭の中で無限に広がる感情たちの世界を舞台にした「インサイド・ヘッド」の続編。ピクサー作品の中でも特に泣ける名作の一つとして知られ、自分の感情を大事にすることの大切さや誰もが子どもの頃に経験したうれしい気持ちや切ない気持ち、そして家族の絆にまつわる温かいメッセージを描いており、世界中を感動で包み込み、多くの人の涙を誘った。
そんな感動作の続編は、2023年に公開されたUS版特報がディズニーの全アニメーション作品史上最高の再生回数を記録するなど、既に全世界から大きな注目が集まっている。今回はどんな共感と感動をもたらしてくれるのか期待が高まる。
とはいえ公開までまだ約4カ月あるので、まずは「あの夏のルカ」でピクサーがくれる感動体験に包まれながら楽しみに待とう。
「あの夏のルカ」は、3月29日(金)より全国劇場公開。また、ディズニープラスでも配信中。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
Happinet