日本最大級のCS映画専門チャンネル「ムービープラス」では、4月7日(日)に70歳になるアジアが生んだ世界的アクションスター、ジャッキー・チェンのバースデーを祝い、「24時間ジャッキー誕生祭」と題して石丸博也の吹き替えでジャッキー映画11作品などを24時間ぶっ通し放送する。1970年代、シリアスな作品が多かったカンフーアクション映画界に現れ、コメディー要素を多く盛り込んだ作品で新たな層を取り込み、独自のスタイルを打ち立てたジャッキー。新作映画「ライド・オン」の公開も控えるジャッキーの魅力と、“もう一人のジャッキー・チェン”こと声優・石丸博也を掘り下げる。
ブルース・リー主演作のエキストラから国際的スターへ
ジャッキーは、当時のトップアクションスター、ブルース・リー主演の「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972年)、「燃えよドラゴン」(1973年)へのエキストラ出演などを経て、「タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道 序章」(1974年)で初主演。1970年代後半の「スネークモンキー 蛇拳」「ドランクモンキー 酔拳」「クレイジーモンキー 笑拳」といった個性派作品でも主演を務め、人気が一気に高まった。
見る者をハラハラさせる危険と隣り合わせの緊迫感のあるアクション、相反する思わず笑ってしまうコミカルな要素、そしてその世界に引き込むテンポの良さで、アジアのトップスターに君臨すると、1990年代には香港製作の「レッド・ブロンクス」が全米興行収入1位というアジア映画初の快挙を達成。さらに、1998年公開の「ラッシュアワー」の大ヒットによってアジアのトップスターから“ハリウッドスター”へと進化を遂げた。
それから数十年の月日が流れ、2024年4月7日に“古希”を迎えるジャッキー。それでも若々しい肉体、立ち居振る舞い、作品にかける情熱はまだまだ健在で、5月31日(金)には新作主演映画「ライド・オン」も公開予定。「ジャッキーここにあり!」を全世界へ印象づけてくれるはずだ。
その最新作で話題となっているのが“日本語吹き替え版”だ。それは、2023年3月末をもって声優業から引退していた“もう一人のジャッキー”こと石丸博也が、この作品のために日本語吹き替え版で限定復帰したということ。「やっぱりジャッキーの声は石丸さんじゃないと!」というのは日本のジャッキーファンの総意だろうし、ファンのみならず聞き覚えのあるあの声でジャッキーのアクションが画面いっぱいに繰り広げられるのはうれしい限り。
「マジンガーZ」主人公の役でブレイク
あらためて石丸の略歴を紹介すると、彼は大学在学中に「劇団ひまわり」の研究生に応募したのが芸能界入りのきっかけ。「大江戸捜査網」(1970年~)などのドラマに出演していたが、27歳の頃に声優としての活動もスタートさせた。海外のアクションドラマ「マニックス」で初レギュラーを務め、1972年に大ヒットアニメ「マジンガーZ」の主人公・兜甲児の声を担当した。2009年のテレビアニメ「真マジンガー 衝撃!Z編」で赤羽根健治に交代するまで、兜甲児を長期にわたって演じてきた。
兜甲児同様、長い期間担当してきたのがジャッキーの吹き替えだった。1981年1月に「ゴールデン洋画劇場」(フジテレビ系)で放送された「ドランクモンキー 酔拳」に始まり、ほぼ全ての出演作の吹き替えを担当している。
ジャッキーの人気を決定づけた初期の作品の声を演じたことで、多くの視聴者に「ジャッキーの声=石丸博也」というイメージが定着し、ジャッキーの姿からその声を連想する人も多い。日本語吹き替え版の良さ、楽しさを教えてくれた声優であり、それが“もう一人のジャッキー”や“日本のジャッキー”などと呼ばれる所以でもある。
2020年には「同じ声優による同一俳優への吹き替え映画の最多数(申請時75作品)」としてギネスの世界記録に認定されるなど、2人は切っても切り離せない関係になっている。2023年3月末をもって声優を引退したものの、新作で限定復帰したのもうなずける。ちなみに「石丸さんが香港映画に出演することがあれば僕が吹き替えをする」とジャッキーが語っていたという逸話もあるほどで、まさに相思相愛の関係性だ。
なお、ジャッキーの誕生日を祝って一挙放送されるムービープラスの「24時間ジャッキー誕生祭」も、もちろん石丸が声優を務めた日本語吹き替え版だ。ジャッキー自ら監督・原案・武術指導も務めた「ポリス・ストーリー」シリーズや、クリス・タッカーとのコンビによるアクションが見ものの「ラッシュアワー」シリーズ、人情味あふれるギャングの親分を演じた「奇蹟/ミラクル」、出世作となった「ドランクモンキー 酔拳」の続編となる「酔拳2」、さらには「サイクロンZ」「プロテクター」「カンフースタントマン 龍虎武師」といった全11作が石丸による日本語吹き替え版でオンエアされるので、これを機に、若い世代にもジャッキーのアクションと“石丸ジャッキー”の声の魅力に酔いしれてほしいところだ。
◆文=田中隆信
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