「やり過ぎるくらいやってもいいと…」
――監督からはどんなことをリクエストされましたか?
そんなに多くはなかったんですけど、今回はもうちょっと残酷性を視聴者に見てほしいからやり過ぎるくらいやってもいいと言われました。
さとう(けいいち)監督の頭の中でしっかりとビジョンが描かれていて。芝居心というか、芝居に対しての造詣が深い方だという印象です。さとう監督の演出に従ってやることに迷いがなかったのですごく助かりました。
――中村さんが思う理想のヒーロー像はありますか?
単純にヒーローと言っても正義の行いをすることだけではなくて、悪には悪のヒーローみたいなものが昔からあると思うんです。
どちらにも共通しているのは信念が強いという点。自分がこれと信じたものに対して真っすぐ向かっていくということがヒーローの条件なのかなと。みんなそうありたいと思うんですけど、どうしてもブレてしまうんです。
例えば「今日からタバコをやめる!」と決めても明日からにしようかなって思ったり(笑)。そういうささいなことで簡単に曲げてしまう。でも、ヒーローたちにはそれがない。真っすぐ突き進んで行くところに憧れや尊敬の念を抱きます。
中村にとってのヒーローは“シュワちゃん”
――ちなみに、中村さんにとってのヒーローは?
映画を見ていて思うのは、アーノルド・シュワルツェネッガーです。コミカルな芝居の時は別ですけど、主役で圧倒的な存在のキャラクターを演じている時は寡黙でクールな役どころが多い。何も語らずに行動で物事を進めていく姿はヒーロー然としているなと。
不器用で武骨。スマートじゃないところに人間味を感じられるから愛される。さっきの理想のヒーロー像にもつながるんですけど、誰にも負けない気持ちの強さを持ちながらどこか人間臭い部分がある。完璧じゃないというところが魅力なのかもしれません。
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします!
主眼を置く場所によって見え方が変わってくる作品だと思います。僕自身も着地点がすごく気になっています。
それぞれの役割をこのまま全うするのか、それともどこかで変わって違う方向へと話が進んでいくのか。主人公である戦闘員Dは大きく動くけど、果たして彼が取っている行動もヒーロー的な動きなのかどうかは分からない。もちろん、Dを応援しながら見るのも楽しいですし、彼を取り巻く多くのキャラクターたちも個性豊かで魅力的なので、どの視点から見ても面白い。どういうゴールに向かっていくのか楽しみながら最後まで見ていただけるとうれしいです。
◆取材・文=小池貴之