2024年の1月クールに話題となったドラマといえば、脚本を手掛けた宮藤官九郎が“令和”と“昭和”の時代が持つ価値観の違いを、注釈付きで言い放った“ふてほど”こと「不適切にもほどがある!」(TBS系)が筆頭に挙げられるのではないだろうか。コンプライアンスの概念がない“昭和のおじさん”が、1986年から2024年へ突如タイムスリップ。そして、令和では考えられない“不適切”な言動を繰り返すが、コンプラで縛られた令和の人々に考えるきっかけを与えていくという内容で、言いたいことも言えないこんな世の中に響き、大きな話題となった。そんな宮藤が長年温め、2023年夏にディスニープラスのスターで実写ドラマ化したヒューマンドラマ「季節のない街」が、4月5日(金)から地上波・テレ東系で放送される。同作は主人公・半助(池松壮亮)を中心に仮設住宅で暮らす人々の心情を丁寧かつコミカルに描いており、小さな“街”に広がるさまざまな人間ドラマを映し出している。そこで、今回は心揺さぶる宮藤脚本作品を“適切に”ピックアップして紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
仮設住宅を舞台に描く、ワケあり住民たちの人間ドラマ
宮藤が「紛れもなく一番やりたかった作品で、これを世に出したら自分の第二章が始まるような気がしています」と手応えを語り、宮藤の“第一章”集大成とも位置づけられた作品「季節のない街」。同作では脚本のみならず企画・監督も務め、原作である山本周五郎の小説「季節のない街」をベースに舞台となる街を12年前に起きた“ナニ”の災害を経て建てられた仮設住宅のある街へ置き換え、現代の物語として大胆に再構築した。
街の住民には希望を失った青年・半助こと田中新助、街の青年部のタツヤ(仲野太賀)、街の近所に住む酒店の息子・オカベ(渡辺大知)、「どですかでん」と叫びながら毎日“見えない電車”を運転する六ちゃん(濱田岳)、タツヤらの良き相談相手で街を静かに見守るたんばさん(ベンガル)など、個性豊かなキャラクターが登場し、全員ワケありの背景をユーモアたっぷりで表現している。
戦争やさまざまな自然災害が発生する中、多くの人が痛みや貧しさを抱えて暮らす現実世界。第2話で半助が「大変なのはみんなでしょう。誰よりとか、俺のほうが、とか違うでしょう」と、放つセリフがある。自分の過去を一方的に話してしまい、そのことを謝るタツヤに対して投げ掛けた言葉なのだが、本作ではそういった心に刺さるセリフが多くちりばめられている。フィクションではあるものの、架空の登場人物の心情が多くの視聴者に寄り添っており、同時にいろんなことを考えさせてくれる作品だ。
もちろん宮藤が得意とする“青春群像劇”の要素もたっぷりと詰まっており、半助、タツヤ、オカベの3人組の屈託のない笑顔や織りなす会話劇にクスッと笑ってしまうシーンも多い。
“3人組”で物語を紡ぐ名作の数々
宮藤といえば、 2000年代初期以降、日本のエンタメ界で多くの名作を生み出してきた一人だ。ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)、「タイガー&ドラゴン」(2005年、TBS系)、連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年、NHK総合ほか)、大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(2019年、NHK総合ほか)など、宮藤作品を挙げるとどれもが時代を超えて話題となった作品ばかり。
その他にも名作を挙げればキリがないのだが、このほど放送される「季節のない街」に登場した半助ら若者3人組のように、主要キャラクターたちがトリオで物語を動かしていく作品も印象的だ。
東野圭吾原作のドラマ「流星の絆」(2008年、TBS系)では、二宮和也、錦戸亮、そして戸田恵梨香が演じた有明3兄妹が子どもの頃に殺された両親の敵討ちを誓い、強い絆で結ばれた3人の復讐(ふくしゅう)計画を描いた。バラバラな性格だが、それぞれを大切に思い合う3兄妹の繊細な関係性がドラマを大ヒットへと導いた。
また、ドラマ「ゆとりですがなにか」(2016年、日本テレビ系)では岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥の3人組が「ゆとり第一世代」にあたる1987年生まれの“アラサー男子”に扮(ふん)し、社会で懸命にもがく姿を笑いとともに映し出した。本作では社会が勝手に名付けた“ゆとり世代”とくくられる年代に立ちはだかった、さまざまな社会問題や彼らの心の声をリアルに体現しており、同世代の多くの視聴者から共感の声が上がった。その後、スピンオフ、映画なども登場し、社会へ投げ掛ける強いメッセージも読み取れる宮藤の代表作の一つだ。
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/a-town-without-seasons/
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