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渡瀬マキ「絶対立ち上がれると伝えたい」苦しかった発声障害の事、勇気を与え続けるリンドバーグの35年

2024/04/16 08:00

メジャーデビュー35周年になるリンドバーグ、ボーカル・渡瀬マキ
メジャーデビュー35周年になるリンドバーグ、ボーカル・渡瀬マキ

1990年代のバンドブームで必ず名前が上がる1つにLINDBERG(リンドバーグ)がある。アイドルから転向した渡瀬マキをボーカルに、1988年に結成。1990年にドラマ主題歌となった「今すぐKiss Me」の大ヒットでブレイクした。2002年に渡瀬の出産、子育てを機に一度は解散したが、2014年に完全復活。今年はメジャーデビュー35周年になる。現在は二児の母となっている渡瀬にリンドバーグの音楽と子育ての記憶を振り返ってもらった。(前編/全2回)

「今すぐKiss Me」の大ヒット。リンドバーグの名前に追い付こうと必死だった日々


――アイドルを2年で辞めて、バンドに転向。この当時のことは色々な場所でお話されています。事務所の社長さんも軽いノリだったとか。

そうそう(笑)。松田聖子さんに憧れて念願のアイドルデビューをしたんですけど、どうにも違和感があったんですよね。「なんかしっくり来いへんなぁ」って。あれは聖子さんだからよかったんで、私は違うんだって分かりました(笑)。で、社長に相談したら、「じゃ、バンドにしてライブハウスでやろっか」みたいな感じでした。

――音楽も衣装もガラッと変わって…。

アイドル時代のファンがサーッといなくなりました(笑)。求めているものがもう全く違ったんでしょうね。

――その光景にどんなお気持ちになりましたか? ガッカリしたのか、それとも反骨心が芽生えたのか。

どちらでもなくて、「・・・」みたいな。「あれえ? そうなんや?」って。別にやることが変わっても私は私。音楽のスタイルが変わることが大事件みたいに思っていなかった。けど、みんなにとってはそんなに違うことなんや、みたいな感じでしたね。

――バンドスタイルでの音楽に、ご自身の感触はどうでしたか?

バンド自体はものすごく楽しかったです。初めて音を出して歌ったときは気持ちよさに感動しましたね。バンドが私に合わせてくれるというか、そんな感じが初めてでしたから。だって、鳥羽(三重県。渡瀬の故郷)での練習、上京してのレッスンもカラオケで歌うのしか知らなかったから、新鮮なんてものじゃなかったです。

――ファンが消えたという一方、ブレイクするのも早かったです。2枚目のシングル「今すぐKiss Me」が大ヒットして、一気にリンドバーグの名前が世間に知れ渡りました。

それはもう、周りの世界はガラッと変わりましたね。テレビにもたくさん出させてもらいましたし。でも、相変わらずメンバーはお風呂のないアパートに住んでいたんですよ。

――あの当時で、ですか?

そう。だって「夜のヒットスタジオ」に出るときも、当時フジテレビは曙橋にあって、男子3人はリハーサルと本番の間で商店街の銭湯に行っていたんですよ。渋谷公会堂でライブをするときも、川添くん(川添智久[ベース])、渋谷に来る電車賃がなくて、部屋中探して小銭をかき集めて、やっとのことで150円集めて会場に来たんですよ。でね、今度は帰りの電車賃がないからスタッフに借りてた(笑)。

曲はヒットしても私たちはそんな感じで変わらずだったから、「ドラマの主題歌を歌っているリンドバーグ」っていう存在に追い付くのに必死でしたね。自分たちの状況が周りの状況に全く追い付いていなかった。世間的にはリンドバーグっていうバンド名が知られて、どうやらバンドで4人組らしい。その4人はこういう人たちらしい、みたいな感じで、リンドバーグという名前が私たちのずっと先を走っていたんです。どうにも身の丈が合っていないようなギャップ。それから1年くらいはずっとそんな感覚でいましたね。

――確かに特別大きなプロモーションがないまま主題歌を歌って、いきなりブレイクして出てきたという記憶があります。

だからすごいのは、私たちを主題歌に起用してくれたドラマのプロデューサーなんですよ。それまでアルバムを2枚出していたけど全く売れなくて、全然無名。レコード会社的にも、そろそろリンドバーグはいいんじゃないか、みたいな空気が流れていたんですよね。そんな中で私たちの音楽をたまたま聴いてくださって、私たちの音楽で主題歌を作りたいと思ってくださって、曲の発注が来て。本当、よく私たちを見つけてくださったという思いです。

リンドバーグのライブSHOT。/photo by モモ
リンドバーグのライブSHOT。/photo by モモ


ライブ後のアンケートで知った、思いもよらなかったファンの感想


――渡瀬さんたちがリンドバーグの名前に追い付いてきたと感じたのはどの時期ですか?

やっぱり初めて30本以上の全国ツアーに行くようになったときですね。ライブハウスからホールになって、どこの会場も満員になっている光景を目の前にして、そのときにようやく自分たちがリンドバーグの名前に並んだという実感を持てたと思います。

――当時のことで強く印象に残っている出来事というと、なにが挙げられますか?

当時って、客席にアンケート用紙を置いていたんですよね。それに今日の感想とかを書いてもらう。私たち、それを1枚1枚全部読んでいました。まだ携帯電話もない時代だから、みんなびっしり書いてくれてね。で、打ち上げ会場でご飯を食べながら読むんですけど、年齢を見ると中学生、高校生の子たちがたくさんいたんですよ。

自分たちではターゲットをティーンエイジャーにしているつもりはなくて、その子たちを元気づけたり、勇気づけたりみたいなことって、1ミリも考えたことがなかったんですよね。なのに、「マキちゃんの声を聴くと元気になる」「この曲を聴きながら受験を頑張った」とか、そういうことがたくさん書いてあったのにびっくりで。「ええ! そうなんや!?」みたいな。自分より少し年下の、そういう時期の子たちにそんな影響を与えているなんてそれまで全く知らなかったから、全員すごく驚いたのをよく覚えています。

それがその後のリンドバーグのテーマにもなって、歌詞を書くにしても曲を書くにしても、「前向き。」ということがバンドのコンセプト、カラーになっていきました。聴いてくれる人の気持ちを知るってとても大切で、そのときのツアーはリンドバーグにとって本当に大きな収穫をくれたものでした。それからアンケートを読むのは毎回の楽しみになっていましたね。

下に続きます
■LINDBERG 35周年記念LIVE
Debut 35th Anniversary Tour「Thanx a Million☆」
2024年4月19日(金)/会場:大阪BIGCAT
2024年4月21日(日)/会場:名古屋ダイアモンドホール
2024年4月28日(日)/会場:EX THEATER ROPPONGI
■LINDBERG 公式サイト
flight-lindberg
■渡瀬マキ公式サイト
tincca-tincca

画像一覧
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  • メジャーデビュー35周年になるリンドバーグ、ボーカル・渡瀬マキ
  • 【写真】リンドバーグのライブSHOT。今もパワフルに歌い上げる。/photo by モモ
  • リンドバーグのライブSHOT。/photo by モモ
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