コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、谷口 菜津子さんがX(旧Twitter)上に投稿した漫画「じゃあ、あんたが作ってみろよ」だ。4月11日時点で4万以上のいいねがつく反響が集まり、話題となっている。今回は作者の谷口 菜津子さんに制作の背景を伺った。
失ってはじめて気付く…きっかっけは「筑前煮」
大学時代から5年交際を続けている勝男と鮎美。
同棲をしている2人だが、鮎美は毎日栄養のあるバランスの良い献立、下処理まで完璧にこなして料理を振舞っていた。勝男はそんな鮎美の手料理に対し感謝の気持ちは持ちつつも「全体的におかずが茶色すぎるかな?」といったアドバイスをする。
そして、鮎美にプロポーズを考えてた勝男。
勝男は完璧主義者で何事も完璧にこだわっていた。プロポーズの場所も「ローズ」という思い出の店だと決めていたがなかなか予約が取れない。
そのまま記念日を迎え「ローズ」に連絡をするとちょうどキャンセルがでていた。運が回ってきたと喜ぶ勝男は鮎美を「今日しかないんだ」と急に外食に誘う。
完璧な日に完璧な場所でプロポーズをした勝男。しかし、鮎美からの返事はまさかの「ん~無理」だった。
ショックを隠し切れない勝男だったが学生時代はモテていた過去もあり「女なんていくらでもいる」と開き直って飲み会に参加し、新たな出会いを求め始めた。しかし、そこで「筑前煮をおいしく作れるような子がタイプかな」という自分の価値観が周りに受け入れられないことに気付く。
落ち込む勝男は後輩のアドバイスもあり自分で筑前煮を作ってみることにした。そこで、改めて鮎美の大切さに気付いたのだ。
1話では、よくあるモラハラ男に見えた勝男が、反省し成長していく姿も今作の見所となっている。
実際に漫画を読んだ人達からは「友達にもすすめた!」「一気に読んでしまった」「オチは想定外だった」「マジでタイトルの通りだな」「共感しかない」「オチ最高!」などの反応があがっている。
今回は、作者・谷口 菜津子さんに『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の制作について話を伺った。
作者・谷口 菜津子さんの創作背景とこだわり
――「じゃあ、あんたが作ってみろよ」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
当時色んな編集さんとお仕事したいなと思い、声をかけてくださった編集さんたちそれぞれとお茶したり飲みに行ったりして作品作りのお話など色々させていただきました。
その中でも、ぶんか社の現担当である編集Gさんは料理好きという共通点もあって何か食系の漫画が作れたらと考え始めたのがスタートだったかと思います。
そこから、SNSなどで話題になったポテサラ論争などの「自炊をしない側からの家庭料理に対する口出し」についてや、自分自身が30代になったことで世の中の移り変わりに戸惑う気持ちがわかるようになってしまったこと、担当Gさんが男性なので男性主人公にしよう、など考えているうちに「価値観の変化についていけず取り残されてしまった男性の物語」というストーリーが出来上がっていきました。
――「じゃあ、あんたが作ってみろよ」を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
物語の内容も大事なのですが、料理をする大変さや、作ってもらえる嬉しさありがたさ、作る楽しさを料理をする勝男のシーンを通して読者の方に思い出したり知って欲しいなと思いながら描いています。
料理シーンを描く前に何度か実際に試作するのですが、改めて真剣、丁寧に料理をしてみると野沢菜のおにぎり一つ握るにしても視野が広がって面白いです。
しょっぱくなりすぎないような具の加減や、米を潰しすぎないような握り加減、食べやすいサイズなど、自分だけじゃなく食べる相手がいると料理はより複雑になっていきます。
そうやって広がった目線を持つと、おにぎりだなあとしか認識していなかったコンビニおにぎりも、「多くの人に美味しいと感じてもらえるよう誰かが研究したおにぎり」に見えて感動します。
そういう発見が読者の方にも感じてもらえる漫画にできたら作者としてはすごく嬉しいです。
――今作が収録されています単行本『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の中で谷口さんがこだわった部分やお気に入りの部分があればお教えください。
今まで心から好きだなと思える男性キャラクターが描けていなかったのですが、勝男、大好きなキャラクターになりました。
第一話だと勝男は、鮎美の料理にケチをつけたり時代錯誤な発言を繰り替えす腹立たしいやつなのですが、きちんと反省して、わからないものがあればチャレンジしてるところがなかなかできることではないので尊敬しています。
いきなり急激に現代的な価値観を持つ人になることは難しいので、まだまだやらかすことはあるかもしれませんが、海老原勝男を見守っていただけると嬉しいです。
――谷口 菜津子さんが漫画を描く上で大切にしていることがあればお教えください。
漫画はこう描かなければと考えすぎず、楽しく書くことを心がけています。
あと可能な限り、安心して読める話作りを目指しています。
――谷口 菜津子さんの今後の展望や目標をお教えください。
ファンタジーも描いてみたいし、長期連載ができそうな日常物も描いてみたいし、中年世代や高齢者の話も描いてみたいしやりたいことだらけです。
とにかく長く続けてたくさん描きたいので「身も心も毎日健康」が目標です。
――最後に谷口 菜津子さんの作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
読んでもらえることが私の幸せなのでこれからも手に取ってもらえるよう頑張ります!