いざ本番となると、緊張しいの私は頭から歌詞がすっぽり抜け落ちてしまった。それでも「音域さえ伝わればいい! 全部ラで歌う!」と最後まで歌い切ったあの時間に後悔はなかった。なんなら爽快感すらあった。オーディションの最後に、「好きなアニメはありますか?」と得意分野を聞かれ、オタクスイッチが入った私は息継ぎする暇もないくらい好きなアニメを語った記憶がある。審査員だった古川(知宏)監督が笑っていたのも鮮明に覚えている。
オーディションの帰り道はなんだか夢心地だった気がする。楽しかった。まだ踊りたかったし、歌いたかった。でもやっぱり楽しかった。そんな気持ちがぐるぐると止まることなく熱く駆け巡っていて、自分一人では抱えきれなくなり30分くらい母と電話で話した。もし合格できていなくても今の私を100%出し切った、と初めて思えたオーディションだった。
そして大学も無事決まり、あとは高校を卒業するだけと思いながら受けていた授業終わりに「合格しました」という電話をもらった。だから、星見純那との出会いは、高校生最後につかんだ自分星ということになる。そして、純那ちゃんとの初めての出会いは高校の終業式の日。元々は神楽ひかり役でオーディションを受けていたので、どの役になるかドキドキしながら制服のまま現場へ向かった。
スタァライト最初の現場では、開口一番に「この中で1番好きなキャラと共感できるキャラを教えてください」と言われた。「99期生で1番好きなのはクロディーヌ。なぜなら目元から伝わる自信あふれる姿がキラキラして見えたから。でも、共感という点でいうと純那です。考え方や性格が似ているところが多くて、不器用で、もどかしくなります」。そう答えながらも「きっと一番私らしく演じられるのは星見純那しかいないだろうな」とも思っていた。だから、私が純那ちゃんに選ばれたのは何かの運命かもしれないし、私が引き寄せたのかもしれない。
純那ちゃんと一緒に歩み始めてもう7年。あの頃の何も知らなかった私が、信頼できる人たち、尊敬できる人たちと出逢えたのも、想像もできなかったようなたくさんの景色を見ることができたのも、純那ちゃんと出会えたからにほかならない。
チャンスは誰にでも平等にあると言うけれど、チャンスが訪れる音は実はとっても小さい。あの時、自分星に気づくことが出来てよかった。純那ちゃんが身に付けている髪飾りの鈴が私を呼んでくれたのかなと、本番前に鈴をつけるたびに思う。大切で特別な私にとっての一番星の女の子と出会うまでのお話。
佐藤日向エッセイ連載#4は5月19日(日)更新予定です。「わたしことば」次回もお楽しみに!
佐藤日向プロフィール
さとう・ひなた●12月23日、新潟県生まれ。2010年12月~2014年3月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして活動。卒業後、声優としての活動をスタート。主な出演作に『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)、『ラブライブ!サンシャイン‼︎』(鹿角理亞役)、『D4DJ』(福島ノア役)、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(暁山瑞希役)、『ウマ娘 プリティーダービー』(ケイエスミラクル役)など。ニコニコチャンネル「佐藤さん家の日向ちゃん」毎月1回生配信中。公式SNS
X:@satohina1223Instagram:@sato._.hinata
YouTube:「AMUSE VOICE ACTORS CHANNEL」