「元気でハツラツした感じ」とんぼ役を務めるはやしりかの印象
――とんぼ役のはやしりかさんは本作が初主演になります。東地さんから見て、彼女の芝居はどういうところに魅力があると思いますか?
まずとんぼのイメージに声がぴったりですよね。高く澄んでいて、元気でハツラツした感じの芝居が印象的でした。彼女はコロナ禍でのデビューだから一斉収録が初めてだったらしく、掛け合いの相手がいることに喜んでいましたね。やっぱり相手がいる、いないで芝居の形はずいぶん変わってきますから。
――相談を受けたり、東地さんからなにかアドバイスをされたりというのは?
それはありません。今回に限らず、芝居を作るのは自分。その芝居を指導するのはディレクターの領分なので、役者同士でというのはないですね。その点でいうと、はやしさんは良いものを作るために積極的にディレクターと意見交換をしながら取り組んでいますね。1人の人物を表現するって生易しいことではないから苦しんでいるとは思うんですよ。その分、出来上がりは素晴らしいので、これからどんどん伸びていく才能だと思います。
俳優に大切なのは技術論より豊かな感情。喜怒哀楽のある人生を送ること
――五十嵐はこれまでゴルフに打ち込んできた人生です。同じように東地さんが打ち込んでいることがあれば教えていただけますか。
僕はもともと舞台俳優から出発しています。芝居が好きで、20歳くらいから入った世界。でも、だんだん声の仕事が忙しくなってきて、一時期舞台方面が完全に止まってしまいました。それをなんとかしたいと思い、2014年に仲間たちと小さな劇団を旗揚げしたんです。それからは1年半に一度のペースで公演を打って、楽しく継続しています。これは一生の仕事としてこれからも続けていきたいものですね。
――俳優デビューから数えて34年。東地さんは、洋画ではブラット・ピット、ウィル・スミスら有名俳優の吹き替えも担当しています。長く多くの仕事を続けるために心掛けていることがあれば教えてください。
最低限の健康ですね(笑)。僕は喉のケアをほとんどせず、むしろお酒をよく飲むほうです。酒焼けという言葉がありますけど、僕は飲んでおいた方が次の日調子いいんですよ。若い役をやる人にはお勧めしないけど、僕みたいにある程度中年の役を多くやっていると、ちょっと荒れている感じの方が合うんですよね。ささきいさおさんも「ロッキー」(シルヴェスター・スタローンの吹き替えを担当)がある前の日は飲んでいましたからね。僕ら特有の方法かもしれないけど、これで長く続けられているのかなと思っています(笑)。
――今、声優は若い世代が目指す憧れの職業になっています。これから声優を志す人や若手の声優に送るアドバイスの言葉をお願いします。
確実に言えるのは、自分にしかできないことを追求すべきです。誰かに憧れるのは悪いことではないですが、今、声優は女性も男性も群雄割拠の時代です。どんどん新世代が業界に入ってきていて、プロになる前にもものすごい競争が待っています。その中で生き残るには、自分はなにができるのかを客観視することが重要だし、あとは普段の生活ですね。
声優も含め、俳優というのはプライベートの生きざまが反映される職業です。コミュニケーション豊かな生活を送り、友達や恋人と一緒に笑うもよし、喧嘩するもよし。恋愛映画や舞台を見るのもいいし、絵心を知るのだっていいと思います。喜怒哀楽のある人生を送って、いろいろな感情を体の中に入れること。僕は技術論より、俳優にとってはそれが一番大事なことだと考えています。自分自身の表現を豊かにすることを考えて頑張ってもらいたいと思います。
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