アクションシーンからも目が離せない「赤いさそりの美女」
6月に放送される「江戸川乱歩の美女シリーズ」6タイトルの中でも、猟奇的なバラバラ死体事件が巻き起こる「赤いさそりの美女」は特に注目したい作品の一つだ。
物語は、新作映画「燃える女」のヒロインを決めるためのコンテストで、春川月子という女優が女王に選ばれたことから始まる。しかし月子が同映画に出演する俳優・吉野圭一郎(永井秀和)の恋人だったことから、準女王の相川珠子(野平ゆき)は「最初から春川さんに決まってたのよ」と不満を漏らす。
その後、自宅で家庭教師の殿村京子(宇津宮雅代)から英語レッスンを受けていた珠子は、急遽京子らを誘って、同映画の撮影を見学しに行く。そして現場に着いた京子は、遠くの場所で佇む黒づくめの男の存在に気づき、得意の読唇術で、その男が話す内容を聞き取る。そしてその内容とは、“今夜12時、2人とも死ぬ。念仏堂裏の空家がおまえの死に場所だ”というものだった――。
その後、黒づくめの男が言った通り、念仏堂では吉野と月子が襲われていた。珠子らは慌てて警察を呼んだものの、警察が駆け付けたときにはすでに2人の姿はなく、壁面には血痕でさそりの絵が、現場には100円玉が2枚、10円玉が3枚残されていた。そして翌日、吉野と月子は無残な形で遺体となって発見される。
警察はコンテストと事件の関連性を訴え、犯人は昆虫好きの変質者と考えたが、明智はこれは“復讐”だと推理。その後、月子の死によって準女王の珠子がヒロインに選ばれるが、今度は珠子のもとに“次はお前だ”という脅迫状が届いて…。
物語はさらに急展開を迎えながら、衝撃のクライマックスへと突き進んでいく。ちなみに作中では、明智も犯人に何度か命を狙われ、それに対して明智が勇猛果敢に肉弾戦で立ち向かうなど、緊迫感のあるアクションシーンも見どころとなっている。
犯人の異常な犯行動機が明らかに…「エマニエルの美女」も必見
夏樹陽子が第2作「浴室の美女」に続き2回目の美女役で登場する「エマニエルの美女」も、深みのあるストーリーと息つく暇もない驚きの展開が観る者を待ち受ける逸品だ。
有名推理小説化の大河原(岡田英次)が主催する犯罪研究同好会に招待された明智。そこには大河原の妻・由美子(夏樹陽子)、若手評論家の姫田(中条きよし)、大河原の助手の杉本(江木俊夫)や女優の山村らがいた。
犯罪談議に話を咲かせる一方、由美子の「恐ろしいことが起こりそうな予感がする」という言葉を皮切りに、姫田の飛び降り自殺や山村の死亡など、不可解な事件が連続して発生する。そんな被害者たちに共通しているのは、事件前に“白い羽根”が送られてくること。不審に思った明智は一連の事件を“他殺”と見て、捜査を始める。
その後、杉本にも白い羽が送られてきたため、彼は明智に助けを求め“自分を殺そうとしているのは大河原義明だ”と告げる。実は小説家の大河原は、以前から小説が書けなくなっており、弟子の杉本らに書かせて自分の名前で発表していたのだ。そのため杉本は、「そのことに我慢できなくなった弟子たちを、“自分の立場が危い”と感じた大河原が殺している」と明智に訴える。
杉本の密告により、殺人事件の犯人は大河原かに思われたが、明智のもとに由美子の日記帳が送られてきたことで状況は一変する。その日記の中には、由美子と姫田、杉本が不倫関係にあることや、由美子自身も姫田や杉本を心から欲していたというような内容が書かれていて…。
いよいよ真犯人が明らかになるクライマックスでは、一連の事件の犯行動機を、幼少時からの体験と自身の性分をもとに明かす犯人の鬼気迫る姿に目が釘付けに。異常とも言える犯行動機だったが、なぜか感情移入してしまうような犯人役の演技力はまさに圧巻と言えるだろう。「エマニエルの美女」は、シリーズの真骨頂である先の読めないめくるめく展開に加え、実力派俳優陣による珠玉の演技、映画「エマニエル夫人」を彷彿とさせる夏樹陽子の官能シーンなど、見応え満載の作品となっている。
キングレコード