ミステリアスな表現のうまさで役の味わいを深める
近年はテレビドラマでの活躍ぶりも目覚ましいが、2000年以降しばらく映画に専念するような形で、若き日本軍人を凛々しく演じたチェン・カイコー監督の「花の生涯 ~梅蘭芳~」(2008年)や台湾映画の「セデック・バレ」(2011年)などアジア圏にも活躍の場を広げて出演作を重ねていった安藤。
「バトル・ロワイアル」のような強烈なキャラクターであればあるほど、人の記憶に残りやすいもの。そして、そういった当たり役を持っていると参加する作品の役柄で「この人は何か裏があるんじゃないか?」と期待させてくれるのも面白いところ。ミステリアスさは役に深みを与える。
例えば、交換殺人をテーマにして考察ブームを巻き起こしたドラマ「あなたの番です」(2019年、日本テレビ系)では、マンションの自室に大荷物を運ぶ謎多き人物。実は全く殺人には関与していないというオチだったのだが、安藤が演じているからこそ考察を大いに沸かせた。同じく真犯人探しが焦点だった「テセウスの船」(2020年、TBS系)では、事件の重要なカギを握る車いすのミステリアスな男で引き付けた。
また、「ボイスII 110緊急指令室」(2021年、日本テレビ系)では、唐沢寿明演じる主人公に恨みを抱く“白塗り男”の狂気がSNSで絶賛されたが、これも安藤の持ち前&培ってきた表現力の賜物だろう。
2024年も人気コミックの実写化から軟弱な男まで、映画、ドラマに躍動
“再ブレイク”と呼ぶには活躍が継続しているが、2024年も話題作への出演が相次いでいる。
6月4日に最終回を迎えたドラマ「Destiny」(テレビ朝日系)では、石原さとみ演じる主人公・奏の恋人だったが、別れてしまう医師役。同作はサスペンス×ラブストーリーということで、視聴者から安藤の役が怪しいかもと思われていたのは先述の作品群と同様だが、「結果いい人で驚いた」という感想の他に「(別れてしまって)もったいない」と声が上がったのは、49歳になった安藤の大人の色気が格好良さを際立たせたのだろう。
一方、ディズニープラスで4月から配信中のドラマ「フクロウと呼ばれた男」での演技も実に素晴らしかった。同作は、あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、時にもみ消し、時に明るみにさらして解決してきた黒幕/フィクサーである“フクロウ”こと大神龍太郎を主人公に、国家の裏側・タブーに切り込んだ社会派政治ドラマ。龍太郎を田中泯、父・龍太郎と対極な生き方で“正義”を掲げる次男・大神龍を新田真剣佑が演じ、安藤は龍の兄・一郎に扮(ふん)した。
一郎はトラブルばかりを起こす上に、ハニートラップとは知らず愛人に入れ込んでしまう情けないキャラクター。父の期待に応えることもできず、自分には何の力もないのに愛人への気持ちが止まらない。その一郎を体現する安藤の演技のうまさに、いろんな意味でヒヤヒヤさせられた。あらためて安藤の演技のふり幅には脱帽だ。
また、映画では4月公開「陰陽師0」のほか、Netflixオリジナル「シティーハンター」も話題に。北条司の大人気コミックの実写化で、鈴木亮平が冴羽リョウを見事に演じているのが話題先行しているが、安藤はその相棒・槇村秀幸役。物語の序盤で亡くなってしまうが、アクションもこなして物語を大きく動かすことになる役で、出演時間は短いながらも鮮烈な印象を放っている。
そして6月7日(金)からは杏主演の映画「かくしごと」が公開に。主人公が出会う虐待された少年の父親役だ。
「Destiny」出演の際の当メディアのインタビューで、影響を受けた俳優として緒形拳さんの名前を挙げた安藤。「緒形さんのメソッドや感情がすごく好きなんだ!」と俳優仲間に語ったそうだが、アラフィフになって円熟味も増した先で、どんな表現のキャラクターを見せてくれるのかますます楽しみになる。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/house-of-the-owl/
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