生の演技と本物の存在感にこだわった監督たち
映像のリアリティーには、撮影セットにも秘密がある。メイキング映像やキャスト&スタッフインタビューなどで明らかになっていることだが、「ハリー・ポッター」の撮影には、CGではない本物が随所に使用されている。その1つとして有名なのが、ホグワーツの大食堂に並んだご馳走の数々は全て本物だったということ。
ハリー・ポッター公式X(旧Twitter)に「ここに映っている食べ物…実は全部本物なんです」と投稿されており、ハリー役のダニエルも食堂シーンはご馳走の山だったとメディアインタビューで答えている。きっと、料理を前にした子どもたちの表情は生の驚きだったのだろう。“両手にチキンを持つロン”はかなりの飯テロシーンで、ここだけでも何度も繰り返して見たくなってくる。これは第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」のクリス・コロンバス監督のこだわりだったという。ただ、毎回大量の料理を用意するのは大変だったのか、第2作目「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(監督同)からはフェイクを混ぜているらしい。どれがフェイクなのか、映像を見比べてみるのも面白いだろう。
また、「賢者の石」で出てくる巨大な駒によるチェスシーンも、CGやミニチュア合成ではなく、全て美術チームが制作した本物の巨大セットだ。駒の爆発も、圧縮空気装置で実際に爆破させている。他にも「秘密の部屋」に登場する巨大蜘蛛やバジリスクも美術セットによるもの。今のCG技術であれば本物と見紛う画面を作ることは可能だが、実物の存在感へのこだわり、臨場感のある演技を求めたからなのだという。
映画は10年に及ぶ長編シリーズとなったため3人の監督が起用されているが、共通しているのは空想世界を現実にするリアリティーの追求だ。上記のようなセット以外でも、中世に建てられたオックスフォード大学のハンフリー公爵図書館、美しい回廊で有名なグロスター大聖堂など、実在の場所を使ったロケも同様だ。すでに何度も視聴済みという人も、こうした撮影の裏側を想像しながら観ると、映像への新たな興味も沸いてくるはずだ。「ハリー・ポッター」は単なる映画以上の存在となり、現在進行形で多くの人々の心に深く刻まれている。この魔法の世界がこれからも愛され続けていくことは間違いないだろう。
映画「ハリー・ポッター」シリーズ全8作は、CS映画専門チャンネル「ムービープラス」の毎週夜9時「ワーナー ブラザース劇場」にて放送。第1作目「ハリー・ポッターと賢者の石」は7月10日放送。以降、2か月連続で順次放送される。
■文/鈴木康道
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