コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、七星さんがX(旧Twitter)に投稿した『とある人形と少年の話』をピックアップ。
6月16日にX(旧Twitter)へ本作が投稿されたところ大きな反響を呼び、2.2万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者の七星さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
人形に宿った神様の叶えられなかった願いとは…
古来よりこの国では、八百万の神々がいると言い伝えられていた。その力は強大で人々は崇りや呪いを恐れ神を敬った。しかし、物や道具に宿る神、九十九神の存在は知られていなかった。粗末に扱われ怒った九十九神は一揆を起こした。困った人々はとある神社に道具の供養を頼み災いを逃れた。
その神社の跡取息子「宗介」と狐の耳がはえた男「斎」は市松人形の付喪神の供養を頼まれた。一般の人々には付喪神の姿は見えず、神の眷属たちの力を借りることで付喪神たちを顕現してきた。斎はその眷属であり、供養の手伝いをしてくれている。
付喪神を顕現しその願いを聞くことで災いや祟りを退ける、そしてこれらを済ませた後たき上げを行う。今回依頼された市松人形の付喪神は約百年前に作られ、傷一つなく綺麗だった。おそらく持ち主に大切にされていたのだろう。
付喪神を顕現させると、そこには可愛らしい姿をした付喪神が現れた。「どうして私を呼んだのかな」そう言った彼女はすべてを分かっていた。付喪神が器を失うこと、それは今日が自身の命日であることを意味する。「あなたの最期を見届けます。望みを教えてください。」そう彼女に聞いてみると「別にそのまま捨てられても燃やされたとしても呪ったりせんのに…それならひとつお願いしようか」
斎は箱に入ったたくさんの玩具を持ってきた。「付喪神様何して遊びましょうか」そう彼女に聞くと「…ぜんぶ!」そう元気に答えた。ずっと遊んでみたかったと思っていた付喪神だったが、実は”あいつ”が頭によぎっていたのだった。
この人形の持ち主は体が弱かった。咳がひどく、寝ていることが多かったが布団の隣にはいつも人形がいた。「死んだ後、人と我ら器の魂は同じ所へ向かうだろうか」そう聞かれた宗介は「僕からみたあなたは人のようで。だから…。」その言葉を聞いた彼女は笑顔で「これでやっとあいつと遊んでやれる。ありがとう。」と答えたのであった。
この世は神さえも無常。宗介は人形を燃やす時、椿の花をお供えした。人形の髪飾りは椿を模した手作りのものだった。きっと人形も喜んでくれるだろう。人形が燃え始めた時、宗介と斎は神を想って祈る。彼女が彼と遊べていますようにと。
人形の付喪神の願いを全力で叶えようとする宗介と斎や、最後の展開に涙なしでは読めないと話題の本作。ネット上では「泣かせてくるなぁ…」「こんなん泣くわ」「切ない…」「めちゃくちゃ良い話」などストーリーに魅了された声や、「すっごい好き!」「絵柄が可愛すぎる」といった七星さんの作風に魅了された声も多く寄せられた。
「人形は友達のような存在として大切にしている方が沢山いるんじゃないかな」作者・七星さんの語る創作の裏側
――『とある人形と少年のお話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
元々、人間と人外と言ったような組み合わせが好きなので、少年と付喪神の交流が見られるようなお話になりました。また、元々動物や小物からアイデアを得てデザインしてイラストを描いていたので、道具などを擬人化出来る付喪神というテーマは楽しそうだなと思ったからです。
――『とある人形と少年のお話』の中で気に入っているシーンがありましたら、理由と共にお教えください。
投稿した際に1枚目にしてあるページです。
市松人形の子が登場するシーンなので印象に残るようなコマ割りが出来たらいいなと考えながら描いていました。
――素敵なストーリーに”泣いてしまった”読者が続出しています。人形を題材にした作品や感動的なストーリーは、どこから着想を得ているのでしょうか。
色々な物や道具がある中で特に人形は友達のような存在として大切にしている方が沢山いるんじゃないかなと思ったからです。人形は生き物を模したものも多いので付喪神ということで存在をイメージしやすいと思います。
――絵柄の可愛さに多くの読者が魅了されています。描くうえで意識していることなどありましたらお教えください。
構図やコマ割りにすごく時間をかけています。見せ方で可愛さもだいぶ変わるんじゃないかなと思います。
――七星さんの今後の展望や目標をお教えください。
まだ、漫画を描き始めて間もないので、作品数も少ないのですが、今後色んなお話をかけたらいいなと考えています。自分の好きな要素を詰め込んだ漫画にしたいです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
いつも見て頂きありがとうございます!昔から漫画家さんに強い憧れがあったのですが、やっと一作形にできて少しだけ前進出来たかなと思っています。これからも色々なものを描いていくのでまた見ていただけると嬉しいです。