「シュワちゃん」ことアーノルド・シュワルツェネッガーと、「スライ」ことシルベスター・スタローン。往年のハリウッドファンにとって、「肉体派アクション俳優」と言えば、まずはこのふたりの名前が浮かんでくる方も多いだろう。どちらも1970年代後半から80年代初頭に頭角を表し、長年にわたりハリウッドのアクション映画界を牽引し続けたレジェンド的存在だが、シュワルツェネッガーは7月30日で77歳、スタローンは7月6日に78歳となる。良きライバルであり親友でもあるふたりの誕生日を記念して、ムービープラスでは7月5~6日にふたりの主演作11作品を24時間一挙放送。(※29~31日に再放送あり)これを機に、改めてふたりの魅力を再確認してほしい。
シュワちゃんとスタローン。異なる経歴とバックボーン
ふたりはどちらも同時代に一世を風靡したスーパースターではあるが、その経歴やバックボーンは異なっており、それゆえに映画ファンにとっては同じ最強キャラでも抱く印象がガラリと違うのが面白いところ。例えば、シュワルツェネッガーは元ボディビルダーの世界チャンピオンで、トップアスリートして俳優業へ転向。その鍛え上げられた肉体美は『コナン・ザ・グレート』(1982)ですぐに脚光を浴び、続く『ターミネーター』(1984)で一気にトップ俳優となる。対してスタローンは大学で演技を専攻し映画の道へ入ってきたものの、下積み生活が長く、何年にもわたって食うにも困るほどの極貧生活を送ってきたという苦労人だ。役柄的にも、『ターミネーター』や『プレデター』(1987)のように最初から最後まで徹底して無双し続けるシュワルツェネッガーに対し、スタローンはうだつの上がらない底辺ボクサーがチャンピオンへと這い上がる『ロッキー』(1976)や、PTSDを抱えた兵士を描いた『ランボー』(1982)など、孤独さや影が色濃く滲み出ており、むしろ社会派映画の主役というイメージも強い。規格外の肉体を誇るシュワルツェネッガーがもつ突き抜けたヒーロー性と、不屈の精神で泥臭く戦うスタローンのダークヒーロー的イメージは、こうした初期作品によって形作られた影響が大きいだろう。
それぞれに多種多様な役柄、主演作の見どころは…
実際に今回放送される作品でも、『イレイザー』(1996)はとくに『ターミネーター』的なシュワルツェネッガーの魅力が詰め込まれており、ハイテク兵器の電磁銃(レールガン)を両手に持ってぶっ放すシーンは、ファンが求めるシュワちゃんそのもの。しかし一方で、『コラテラル・ダメージ』(2002)でのシュワちゃんは消防士役。超人ではない生身の人間としてのアクションを披露しており、じょじょにその役柄の幅を広げていったことが伝わってくるだろう。
そんなシュワルツェネッガーと比べると、今回放送されるスタローン主演作はじつに多彩だ。初期作のひとつで、ペレなど実在のサッカー選手も多く出演している『勝利への脱出』(1981)は、サッカーの試合中に捕虜たちが脱出を試みるという異色作で、サッカーファンに向けてもオススメできる映画となっている。また『コブラ』(1986)はシンプルにスタローンが無敵する姿を楽しめるアクション大作。一匹狼なアウトローというスタローン像を強烈に印象付けた作品でもある。またスタローン主演作は、ライバルとの対決やコンビの共闘が楽しめる作品も数多い。例えば『デッドフォール』(1989)ではカート・ラッセルと夢の共演を果たし、刑事コンビとしてド派手なガンアクションが堪能できるし、『デモリションマン』(1993)はスタローンにしては珍しい近未来SFの世界観で、凶悪犯を演じるウェズリー・スナイプスの怪演にも注目したい。さらに『暗殺者』(1995)では、超一流の殺し屋として、同じく殺し屋に扮したアントニオ・バンデラスと超絶アクションを繰り広げており、90年代アクションの隠れた名作と言える。また「競演」という意味で挙げたいのが『スペシャリスト』(1994)だ。この作品では「爆破」をキーとしたアクションにチャレンジしているが、同時にシャロン・ストーンとの初共演を果たしており、濃厚なラブシーンも大いに話題となった。普段は男臭いスタローンのセクシーな魅力が感じられ、変化球的作品として楽しめるだろう。
また、スタローンの代表作である『ランボー』シリーズからは『ランボー 最後の戦場』(2008)がラインナップ。シリーズとしてはじつに20年ぶりとなる4作目で、再びランボー役として復帰。壮絶なアクションはもちろんだが、ミャンマーで起きている少数民族への非人道的な弾圧を告発する意味合いも込められており、ゆえに過去シリーズと比べるとかなりハードな殺戮シーンが描かれている。人命の軽さを社会に問いかける社会派作品としても高い評価を受けた作品だ。また『バックトレース』(2018)は刑事役のスタローンが姿を消した銀行強盗犯の行方を追うクライムアクション。アクションにそこまで重点を置いた作品ではないものの、70歳を超え、いぶし銀で渋いスタローンの魅力が堪能できる。
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