“ツンデレ魔王”に続き、“ツンデレ長官”で魅力発揮
そして、「蒼蘭訣~エターナル・ラブ~」の大ヒットから半年も経たなない2022年末、まだ“蒼蘭訣ロス”の熱も冷めやらぬ時期に配信開始したのが「浮図縁~乱世に咲く真実の愛~」。こちらも1話冒頭は、下っ端の宦官を踏みつけにし、娘たちの殉葬にも眉一つ動かさない長官・肖鐸の冷酷非道ぶりがこれでもかと描かれる。
さらに肖鐸は、亡き弟の仇討ちのため身分を偽って後宮に入り込んでいる人物。それだけに、次期皇帝を取り込んで権力を握ろうとする者たちとの政治的な駆け引きがスリリングに描かれ、サスペンスの側面も充実。美しい顔を少し曇らせるようにして思案し、政敵の先の先を読んで冷静に次の一手を決断していく肖鐸は、ゾクゾクするほどかっこいい。
そんな肖鐸が、歩音楼という女性に会って価値観を大きく揺るがされていく。歩音楼は、とっさのひらめきでピンチを切り抜ける賢さを持ちながら、地位も権力も望まず「適当に生きられれば十分だわ」とあっけらかんと話すキャラクター。そんな彼女の人柄に触れ、率直で温かい言葉に励まされるうちに、肖鐸は感じたことのない感情に囚われていく。「月上重火~江湖に燃える愛~」などロマンス古装劇のヒロイン役で知られるチェン・ユーチーが、肖鐸が初めての感情を募らせていく相手を魅力的に演じている。
恋を知らなかった冷血漢が恋に落ちていく…
恋を知らなかった冷血漢が恋に落ちていく――この過程こそが、ホーディー演じるキャラクターの最大の魅力だ。一切の感情を見せなかった肖鐸がいつのまにか笑顔を見せるようになり、やがて切ない表情を浮かべるようにもなっていく。その微妙な表情の変化をホーディーが繊細に表現し、肖鐸に芽生えた人間らしさを浮き彫りにする。好物のチェリーをつまむ姿も、ホーディーが演じるとクールなビジュアルとまったく矛盾せず、チャーミングですらある。
「蒼蘭訣~エターナル・ラブ~」と「浮図縁~乱世に咲く真実の愛~」の立て続けの大ヒットを受け、翌2023年には広告起用社数15社増加で名実ともにトップスターとなったホーディー。彼の繊細な演技が生み出す珠玉のツンデレっぷりを見れば、Instagramが540万人、博微(Weibo)が2,100万人であわせてSNSフォロワー2,650万人(2023年7月時点)という凄まじい人気ぶりも納得だ。日本初放送の「浮図縁~乱世に咲く真実の愛~」をきっかけに、中国ドラマ界最旬スターの演技をじっくり味わってみてほしい。
◆文=酒寄美智子
TCエンタテインメント
発売日: 2024/02/02