3人の背中を押すゲームは、“ゼロから始める誰か”の背中も押す
「デンパトウ」をプレイして感じたのは、製作者の熱量だ。番組の企画ではあるものの、本気で「楽しいゲーム」を作ろうとしたことが伝わってくる細かなこだわりがあちこちに見える。
たとえば世界観をイメージしてアイデアを出すだけなら、そこまで難しいことではない。だがプログラミングを進めるなかで、パラボラの強化アイテムや背景のドットなど細やかなこだわりは、まさしく愛といえるだろう。素材を用意し、プログラムとして実装し、さまざまな挙動でバグが起きないか動作を確認する。「仕事だから」となあなあに作っている作品にはない、愛ある作り込みを感じられた。
また実は同作、5月19日にはユーザビリティの改善、6月8日には会話内容などのアップデートがおこなわれている。昔と違って「作って終わり」ではない現代、同ゲームも同じく“より良いゲームになってほしい”という気持ちから継続的な保守が続けられているようだ。
プログラミングを学ぶ人が増え始めているが、何事もイチから始めるのは大変なこと。学ぶなかで多く壁にぶつかることも多いはずだ。吉田・弓木・林という“ゼロ”から始めた3人も、たった一文字間違うだけでまったく動かなくなるプログラミングの世界には戸惑ったはず。
だが明確に動いて遊べるゲームが完成した瞬間には、なににも代えられないモノづくりの喜びが待っている。「デンパトウ」は、そんな彼女たちが歩む未知の先にある着地点の1つ。番組ではトロヤ氏から開発過程の解説を受けて勉強していた彼女たちにとって、“ゼロから”作り上げられていった「デンパトウ」の完成は大きなインパクトだったに違いない。
そして彼女たちが感じた感動は、同じく“ゼロ”から始めようとしている人々にも届いたはず。いまは簡単なプログラムしか組めない、でもその先へ進めばこれほど“感性”に訴えかける作品を作れるかもしれない…。インディーズゲームの魅力を“制作過程の学び”とともに味わえる「デンパトウ」は、夢を追う人にとって巨大な価値を持つゲームとなった。
ゼロからでも始められるということ、いまどきの派手な演出はなくても楽しいゲームは作れるということ、少ない人数でも挑戦できること。同番組の挑戦は、「デンパトウ」をプレイするとより一層感動体験を深めることができる。
乃木坂46の吉田綾乃クリスティー、弓木奈於、林瑠奈がゲーム制作でプログラミングを学ぶ「東京パソコンクラブ~プログラミング女子のゼロからゲーム作り~」。多くの挑戦を続ける同番組は、次回7月19日の放送でドスパラ秋葉原本店を訪ねて“自作PC”について学ぶという。