長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『デカ盛りハンター』(テレ東)をチョイス。
魔法と永遠について『デカ盛りハンター』
大食いコンテンツを見ていると、まったく不思議で仕方がない。ギャル曽根やジャイアント白田を見て育ってきたが、メシが消えているようにしか思えないのだ。たとえば5キロのメシを食べたとする。そのメシは、体内に移動をする。もちろんすぐに消化活動が行われるのだろうが、たとえ一時的にでも、人間の腹に5キロものメシが収まるとは思えない。しかも大食いの人って5キロどころじゃないし……。
事実、この『デカ盛りハンター』に登場した大食いアイドルのもえのあずきと大食いYouTuberのもぐもぐさくらは、北関東を中心に展開する和食チェーンばんどう太郎にて、総重量14キロもの料理を完食している。大食いのふたりが胃袋の限界まで食べたらお会計はいくらになるのか、というのが企画のメインなのだが、そんなことよりも、14キロという数字に驚愕する。2で割って7キロ。ひとりの身体に7キロものメシが入った。膨張して破裂しても不思議じゃないと思うのだが、ふたりはけろっとしている。もしかして、私は魔法を目の当たりにしているのか?
実際のところは、現実的に説明がつくのだろう。いっぱいものを食える体質だと言われれば、そりゃそういう人だっているだろう。現実にいるのだから当たり前だ。しかし……
あらゆる生命、ひいてはこの地球そのものは、循環によって成り立っている。水が最も良い例であり、この地球における水の総量は、変わることがないのだという。そして、それは、あらゆるものがそうなのであろう。何かがまったく消滅することなどあるわけがない。たとえば花が枯れたって、消えるわけじゃない。”ある”と判断されないものに変化するだけなのだ。人間だってそうだ。死んで焼かれても消滅はしない。灰に変化する。この世の神羅万象、ありとあらゆるものは、決して消えることはない。変化をするのである。そして、大食いというのは、この原則を無視しているように感じるのだ。だって消えているからだ。寿司やうな重や味噌煮込みうどんといった物質が、ある穴に放り込むと消えるのだ。もしくは、その寿司やうな重や味噌煮込みうどんらは、底のない穴を永遠に落下し続けている可能性もある。
大食いとは、魔法か、永遠か……私はこのところ、松屋の大盛でも苦しくなってきた。
■文/城戸