2.5次元舞台とそうでない作品は“チューニング”が必要
──その「お芝居が面白い」という気持ちは、始めた頃と今で変わっていますか?
お芝居を始めたのが高校生のときなんですけど、それまではレッスンをほぼ受けたことがなくて。「とにかくやるしかない」みたいな状態がずっと続いていたんです。でもそのやり方に限界が見えてきたので、基礎からちゃんとやりたいなと思っていたときに師匠と出会いました。その人のところでみっちりお芝居を勉強すると決めたことでかなり変わりましたね。お芝居の概念も変わったし、「お芝居1本でやっていこう」という気持ちにもなったし、それこそ演技が楽しいと思ったのもそのときからです。
──師匠にはどういったことを教わったんですか?
理論を教わったというより「これやってみろ」って、体当たりでやっていく感じではあったんですが、“役に体を支配されるんじゃなくて、第三の目みたいなものを持って、客観的に全体を見て芝居を見ろ”ということをずっと言われていました。そして、「役と自分で手を組め」と。役の名前の間に、自分の名前がミドルネームのように入っている感じですね。
──役にのめり込んでいるときでも、常に第三の目のようなものを意識するように?
はい。でも、今は無意識に第三の目みたいなものが備わったように思います。
──今はもう無意識に。
はい。師匠のところにいる間は、作品も出ないし、オーディションも受けないと決めていたんですが、半年後くらいに一つだけ受けた作品があって。それで受かったのが舞台『魔法使いの約束』、僕にとっての初めての2.5次元舞台でした。そこからずっと2.5次元舞台にも出させていただいているので、すごいタイミングだったなと思います。
──いろいろな作品で活躍されていますが、お仕事をする上で大切にしていることはありますか?
2.5次元舞台に出たら、一度ストレートの作品を挟んで、また次は2.5次元舞台という感じで、リセット期間を作るようにはしています。僕はそれを“芝居のチューニング”と呼んでいるんですけど。自分のなかで、2.5次元舞台とストレート舞台は芝居の作り方が違うので、その切り替えが必要なんですよね。
──その違いを言語化すると?
ストレートは、台本に沿って感情のままセリフを伝えていくので、入り込む。それに対して。2.5次元は物語を俯瞰して見てもらうイメージで、“出来上がっているところに入る”みたいな感覚です。原作ファンの方もいらっしゃるので、原作のキャラクターに近づけつつ、でも原作に近づくだけだったら誰でもいいわけで、そこに自分の味をどれだけ出せるかを考える。芝居の仕方は全然違いますね。
──両方に出続けるということは大切にしている?
そうですね。ストレートで自分の感情を揺らせるのはすごく楽しいなと思いますけど、2.5次元に自分の居場所があるなら、できるだけ自分の精一杯のことをしたいなとも思います。