アイナ・ジ・エンドが、7月25日に都内で開催されたドラマ「路上のルカ」のワールドプレミア上映に登場。メガホンをとった岩井俊二監督と共に、今作への思いや撮影時のエピソードを語った。
「路上のルカ」とは
同作は、2023年10月13日に劇場公開された音楽映画「キリエのうた」の脚本と、撮影終了後の初期編集版を基に、岩井監督自身が編集を行ったディレクターズカット版。アイナ演じる主人公・ルカ(キリエ)による楽曲「幻影」の歌唱や、松村北斗(SixTONES)演じる夏彦の逡巡など、岩井監督が「泣く泣くカットした」という映画の未公開シーンを加え、全10話、5時間半超えのドラマに再構成したものだ。
今作の撮影当時のことを、アイナは「ほぼほぼお芝居も初めてだったので、台本を頂くタイミングやせりふを言うタイミングも何も分からず現場に入ったのですが、とても覚えていることがありまして…」と前置きし、「広瀬すずちゃんが『こんなに分厚い台本は見たことがない!』って言ってたんです(笑)。『(時間的に)収まるのかな!?』って言ってたので、(普通の映画より)せりふが多いのかなと思っていたらまさかこんな5時間(以上の)バージョンが(笑)。タイトルも変わって、新しく生まれ変わった『キリエのうた』が世に出ていくこと、すごくうれしいです」と振り返りながら、ディレクターズカット版の放送を喜んだ。
また、夏彦役の松村とのエピソードを聞かれると「松村さんには『キリエのうた』がきっかけで、楽曲制作をさせていただきました。『ガラス花』という楽曲で、スケジュールがお互い忙しい中でも松村さんに花を添えるつもりで後悔のない作品をやりきれたと思うので、そういうきっかけをくれたのが『キリエのうた』だったなと思います」と、本作での共演がきっかけとなり新たなコラボが生まれたことを伝えた。
今回の放送にあたってのタイトルは「路上のルカ」だが、実はもともと映画版のタイトルに決まりかけていたそう。岩井監督は「クランクアップのときにタイトルとサインを書いて、台本に表紙を作ってお土産で役者さんに渡すというのをよくやっているんですけど、確か北斗君には『路上のルカ』って書いて渡していて(笑)。その後にタイトルが変わって申し訳ないなと思っていたんです」と意外なエピソードを。
映画版のタイトルも最初は「路上のルカ」だった
タイトルは編集していくうちに変わったそうで「どこで変わったかは忘れたんですけど、『路上のルカ』があまりかみ合わなくて。今回のを見てもらうと分かるんですけど、これだけ(映画版と)流れが違うとタイトルも変えなきゃいけないんだなって」と打ち明け、「タイトルってすごく大事なので本当に吟味するんですけど、それで『キリエのうた』が一番映画に合っているなと選択して、今回の長いほうは『キリエのうた』じゃない、これは『路上のルカ』だと。その違いを楽しんでほしいです」と、岩井監督ならではのこだわりを語った。
そしてあらためて5時間半超の今作を見て、アイナは「(約2年前に撮影したということで)自分もちょっとずつ大人になって、キリエの人格を忘れていましたが、『路上のルカ』を見たときにすべてを思い出して、岩井さんとすずちゃんといるだけで私はルカだったんだな、少女の心を宿してくださっていたんだなって。本当に尊い時間だったんだなと思い出しました」と回想し、「もう二度とあんな感性は宿らないだろうなと思うぐらい、珍しい感受性で歌も歌っていた。すずちゃんと岩井さんと松村さんがいてくれて歌えた歌だったなと。歌のシーンも『キリエのうた』よりも長い尺を使っていただいているので、もし良かったらその時代のキリエにしか歌えない歌を感じてほしいなと思います」と、撮影当時に全身全霊を込めた歌唱シーンについてアピールしていた。
「路上のルカ」(全10話)は、7月28日(日)夜6:30より日本映画専門チャンネルにて独占テレビ初放送。
◆取材・文・撮影=月島勝利(STABLENT LLC)