映画にみる、オードリーの華麗なファッションやダンスと確かな演技力
今回のムービープラス「特集:オードリー・ヘプバーン」のラインアップは、数ある代表作の中からオードリーのキャリアと人生を垣間見ることができるようなものにもなっている。
●「ローマの休日」
8月17日(土)夜8時56分ほかから放送の「ローマの休日」は、先述の通りスターになるきっかけの作品。オードリーは、イタリアのローマを訪問した某国の王位継承者・アン王女を演じ、グレゴリー・ペック扮(ふん)するアメリカ人新聞記者と恋に落ちるというストーリー。自由のない暮らしから、ローマの街に飛び出して、たくさんの経験をしていくかわいさ。けれども、最終的にはプリンセスとして気品ある姿に戻る。その気品は、後年も変わらず、オードリー自身に備わった魅力の一つだ。
●「ティファニーで朝食を」
8月17日(土)夜6時45分ほかから放送の「ティファニーで朝食を」(1961年)では、気まぐれな娼婦を演じた。ファッションアイコンにもなったオードリーのおしゃれさに引き付けられるし、冒頭のビジュアルは、あまりにも有名だ。夜会巻きにしたヘアスタイル、余計な装飾がなくてシックだが優美なラインのブラックドレスにゴージャスなボリュームたっぷりのパールネックレスを合わせ、ニューヨークの五番街にある宝飾店・ティファニーのショーウインドーをのぞき込む。
この有名なドレスは、オードリーが「ローマの休日」後に出演した「麗しのサブリナ」(1954年)でタッグを組んだユベール・ド・ジバンシィが手掛けたもの。手足が長く、華奢な体つきのオードリーは、ドレスはおろか、劇中で登場するシャツ一枚の姿でもおしゃれに見せて、女性たちの憧れの的になった。ドキュメンタリー映画でも「役作りの助けは衣装だった」という言葉があり、オードリーにとってもファッションは欠かせないものだった。特に彼女のファッションを語る上で避けて通れないのがジバンシィであり、アカデミー賞の授賞式や私生活でも好んで着用していたという。
●「パリの恋人」
8月17日(土)昼4時45分ほかから放送の「パリの恋人」(1956年)では、ミュージカル映画の大スターであったフレッド・アステアの相手役で、書店店員からモデルへと変貌していく。ファッションアイコンとして本作でも黒のタートルネックセーターに黒の細身パンツという普段着から数々のドレスまで着こなしつつ、ミュージカル映画としてオードリーのダンスシーンも見どころ。大好きだったバレエの経験を生かし、ピンとよく上がる足、軽やかなステップ、しなやかなダンスを披露している。
●「尼僧物語」
8月18日(日)朝7時30分ほかから放送の「尼僧物語」(1959年)は、恋人との縁も断って修道院に入った女性が厳しい修道の日々を過ごしていきながらもやがて葛藤を抱えていく物語。本作でオードリーは、3度目の「アカデミー賞」主演女優賞にノミネートされ、当初なるつもりはなかった俳優のキャリアにおいて、確かな演技力が備わっていることを見せる。また、同作ではオードリー演じるガブリエルが念願だった看護尼としてコンゴに派遣されることになるのだが、そこで現地の子どもたちやその母に向ける慈しみ深いまなざしとほほ笑みは、生涯後半のユニセフでの活動時と重なる。
●「暗くなるまで待って」
8月18日(日)朝10時15分から放送の「暗くなるまで待って」(1967年)は、オードリーのキャリアの中で珍しいサスペンス・スリラー。意図せず麻薬が隠された人形を渡され、それを取り返しに来た犯罪グループの男たちと対峙(たいじ)することになる盲目の女性を演じ、5度目の「アカデミー賞」主演女優賞ノミネートとなった。徹底した盲目の役作りと緊迫の表情をみせつけ、愛らしいロマンティックコメディーだけではない、演技の幅に感嘆する。
裏話として、「暗くなるまで待って」からしばらくオードリーは仕事をセーブした。それは、自分の子どもとの時間を大切にするため。幼くして父と別れたことから愛を求めたオードリーらしい選択だ。けれども、そこまでに“プリンセス”として始まった俳優キャリアで、世界中の人々に愛を与え、今も、そして今後も続いていくだろう。危機にある子どもたちへの思いから人道支援に立ち上がる強い愛を持ったオードリーの魅力、あらためてこの機会に触れてみては。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
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