コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、斎田千洋さんが描く『フォール イン ピンスポット』より『全然仲良くないバイト先の先輩の話』をピックアップ。
斎田千洋さんが2024年7月20日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1.6万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、斎田千洋さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
男女問わずモテてきた「無差別彼氏面」をするイケメン主人公・賀來桜壽(がらい おうじゅ)は、バイト先の先輩・薮村泰知(やぶむら たいち)が、事あるごとに自分をガン見していることに気づいていた。
理由を知らぬまま過ごしていたある日、桜壽は自分を待ち伏せする女の子をうまく避けるため泰知に助けを求めた。予想外にも恋人のふりをしてきた泰知に、桜壽は驚きつつも興味を持ち始めるのだった。少しずつコミュニケーションを取るようになった二人は、ある日のバイト帰りに、お互いの恋愛話をする。桜壽はいつか自分が主役の恋がしたい、と言い、泰知は前に好きだった人を引きずってる、と話す。
さらに後日、たまたまもらった演劇のチラシに泰知の名前があるのを見て、学内で開催される舞台を見に行くことにした桜壽。演劇開始から約30分して客席から突如現れた役者が泰知であることに気づき、桜壽はとても驚いた。さらに、演技を見ているうちに、その仕草が自分のものであることに気づき、視線を感じていた理由は演技の参考にされていたからだ、と気づくのだった。
上演後、桜壽が観に来ていたことを知り恥ずかしがる泰知。そんな姿を可愛いと感じる桜壽は、泰知を好きになり始めている事を自覚し、さらに演劇部に入ることを決意するのだった。
作品を読んだ読者からは、「ドラマ化してほしい」「二人の空気が好き」など、反響の声が多く寄せられている。
作者・斎田千洋さん「自分が「これいいな、グッとくるな」と思える表情や台詞を描く」
――『フォール イン ピンスポット』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
新連載の題材を何にしようか迷っていた頃、担当さんに「演劇モノはどうですか?」と提案して頂いたのがきっかけです。
そこから「劇場に住み着いてる夜行性の役者」とか「演劇部の大道具を壊したせいで舞台に関わることになる主人公」とか色んなキャラと設定のアイデアを考えてはみたんですが、なかなかこれだ!という決定打に出会えず困っていました。
そんなある日、病院の待合室で待ってる間にふと周りを見渡すと、老若男女色んな人がいたんです。
「自分が役者だったらこういう時なにを考えるんだろう?」と想像したら、やっぱり人間を観察するんじゃないかなと思って「だったら主人公が観察される側の人間で、その視線の理由を勘違いしてたら面白いかも」というアイデアが浮かびました。
――今作を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
描いてる自分が「これいいな、グッとくるな」と思える表情や台詞を描くことです。
特に桜壽は気を抜くとただの優しそうな表情になるので、強気さを忘れないように気を付けてます。
あと泰知が、話が進むにつれて性格の印象がどんどん変わっていくというか色んな一面が見えてくるので、それがバラバラに見えないように、性格の土台は一貫してて見せてる面が違うだけっていうのをちゃんと描け…てたらいいなと思います!
あと舞台稽古の様子は、なにか超常的なセンスで役が降りてくる…とか華やかなものじゃなくて、セリフと動きを覚えて、練習して、試行錯誤をひたすらコツコツ繰り返してっていう地道で見栄えのしない感じを描きたいです。
――今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
桜壽が夜の公園で1人芝居をするシーンです。
連載プロットを考え始めた当初はコミック1冊で完結するストーリーの予定で、桜壽の1人芝居は最終回で入れようと思っていました。でも連載を長めに描かせてもらえることになったので、じゃあ1巻のクライマックスに入れよう!早く描きたいし!という経緯でああなりました。
泰知目当てで演劇サークルに入った桜壽が、泰知1人のためだけに初舞台を上演するっていうのがストレートな愛情表現でいいなと思いました。
そのへんの小さな公園と外灯っていう、暮らしの隅っこにある場所がドラマチックなものに変わる感じも好きです。
あと泰知が怒ってるシーンはどれも好きです。
同期の潟山とケンカになってるシーンや、桜壽に「俺はお前のもんじゃねえよ」とヤケクソでキレてるシーンとか…桜壽から見れば泰知は可愛い先輩だけど、別の人から見ればネガティブな印象を抱くこともあったりするのがリアルでいいかなと思いました。
――Xの投稿には「良すぎる」「ドラマ化してほしい」など多くの反響がありました。こういった反響をどう感じていらっしゃいますか?
ありがたいです!
読んでくれた方の感想は大きなモチベになるので…原稿作業中のしんどさが全部報われます。
自分で描いた作品って結局自分の視点でしか捉えられないので、読者さんの色んな視点からの感想を頂くことで「そういう見方もあるのか」と驚きや発見もあって楽しいです。
「ドラマ化~」の感想を頂いて思ったんですが、作中で明かりを使ったシーンがいくつもあるので実際にその照明をリアル再現したらどんな感じになるのかは見てみたいです。
――斎田千洋さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
来年も漫画を描きながら暮らしたいし、再来年も描けてたらありがたいし、再々来年も……と描き続けていつの間にか60歳ぐらいになれていたら理想です。
さらにその先はちょっとまだ想像がつかないですが…寿命が120歳ぐらいまでいけそうなら80歳ぐらいまで漫画を描いていたいです。
私は漫画を描くのが好きというより自分の描いた漫画を読み返すのが好きで、漫画はその時々の自分の技術や感覚の記録だなと思うので、そうやって自分や誰かが後々で読み返せる記録をたくさん残していきたいです。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
現在は連載再開に向けて準備中なのですが、また読者さんに楽しんでもらえるような展開や胸キュンのアイデアを担当さんとああでもないこうでもないと打ち合わせしてます。
これから桜壽と泰知のどんな新しい感情や表情を描けるのか、まだ私にも分からないし描きたいことが色々あるしで収集がつかなくて未知数で楽しみです。
今後ともどうぞよろしくお願いします!