問題児の“神の子”とやんちゃな“仙獣”の異色コンビ
“仙侠ファンタジー”は、中国の時代劇ドラマの中でも特に壮大な世界観を持つ人気ジャンルとして知られる。中国の道教思想や伝承を下敷きに、神や仙、妖、魔、鬼族といった神通力を持つキャラクターたちが登場し、妖力を使って悪と闘ったり、悲恋を演じたりとファンタジックな世界観を作り上げている。
そんな仙侠ファンタジーは、強い力を持った軍神や魔王と、あでやかな衣装で麗しい仙女や公主(皇帝の娘)のイメージが強い。近年でも、赤西仁が戦神を演じた「凌雲志~愛と正義に生きた英雄~」(2017年制作)や、イケメン俳優ワン・ホーディーのツンデレ魔王とユー・シューシン演じるチャーミングな仙女のカップリングが人気を集めた「蒼蘭訣(そうらんけつ)~エターナル・ラブ~」(2022年)がヒットしたのが記憶に新しい。
そんな中、「神隠し」は主人公カップルのキャラクターが実に個性的なのだ。
男性主人公・古晋は、真の神の子ながら神の力を封じられた身で、罰を受けてもちっとも反省しない楽天的な性格の持ち主。200年蓄えた霊力を酒のために売ってしまったり、拾ってきた卵をあたためてかえしたりと問題ばかり起こしていて、クールなキャラやツンデレキャラが多い仙侠ファンタジーでは異色の存在だ。演じるアンユーはスポーツバラエティ「陽光芸体能」に出演し芸能界入りしたユニークな経歴の持ち主で、「宮廷の茗薇<めいび> ~時をかける恋」(2019年)などに出演し中国国内でめきめきと人気を獲得しつつある。
女性主人公の阿音は、古晋が拾ってきた卵からかえった“水凝獣”。美しい女性の姿をしているが、心は生まれたばかりの無邪気でやんちゃな仙獣で、古晋を鍋で煮ようとしたり、かわいい声で憎まれ口をきいたりする。「花の都に虎(とら)われて」(2020年)をはじめ大ヒット作に主演してきた中国きっての“ラブコメの女王”ルースーが、そんな阿音を愛嬌たっぷりに演じている。
古晋&阿音、“主従契約”を解くための冒険へ
ともに未熟な古晋と阿音が強制的に“主従契約”を結ばされたことをきっかけに、ストーリーが動き出す。古晋の師匠の妖力によって見えない鎖でつながれ、片時も離れることができなくなってしまった2人。修練しない限り、寝る時も同じ寝台で寝なければならないのだ。
修練し、散り散りに飛び散った8つの“仙元”を集めることができれば契約は解かれて自由になると聞き「仙元をすべて見つけたら古晋から解放される!」と張り切る阿音に、“俺には関係ない”とばかり無関心な古晋の温度差がまた可笑しい。そんな凸凹コンビが反発し合いながら、すべての仙元を見つけた暁には自由になるという約束を頼りに、8つの仙元を探し出す道の冒険へと旅立っていく。
初めはそろってポンコツキャラだった2人が冒険を通じて成長していくストーリーが楽しい本作。ラブコメ女王・ルースーのコメディ演技もさることながら、2人の恋愛模様も気になるところ。序盤はコミカルなムードの2人だが、1話冒頭では、“神の子・元啓”となった古晋が阿音を想って涙を流す場面も描かれており、憎まれ口をたたき合っていた2人がどんなふうに心を通わせていくのかも注目ポイントだ。
中国では昨年12月の配信開始前から視聴予約数が600万を突破するなど注目を集め、配信開始後は影視観察(Datawin)のドラマ景気指数ランキングで時代劇ドラマ1位を獲得するなど大ヒットした「神隠し」は衛星劇場で日本初放送。
◆文=酒寄美智子
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
発売日: 2023/04/19