「タイトルは“あいまい”という音も含めて決めた」
ーーでは、タイトルの「I/my」も高杉さんが決めたのでしょうか?
そうですね。いろいろとアイディアを出していただいた中で“あいまい”という音も含めて決めさせていただきました。いろんな意味をすごく感じられる言葉だなと思ったので、僕はこのタイトルがすごくお気に入りです。たとえば、帯にも書いてある「自分のカメラで自分と向き合った」というのもありますし、“自分の未来の曖昧さ”みたいなものも含まれています。
また“フィルムカメラの曖昧さ”という意味も込めました。自分が連載で撮った写真もカメラマンさんに撮っていただいた自分の写真も全部フィルムカメラだったので。連載の写真も本当だったらもっといい写真をいっぱい撮れたんですよ! 現像するまでわからない、そういう安定しない曖昧さというのも含まれています。
ーーそんなフィルムカメラの“曖昧さ”の魅力を具体的に教えてください。
どんな風に撮れているかがその場では全く確認できないので、出来上がった写真を想像するしかない曖昧さがまず一つですね。また実際に現像した写真を見ると、目で見ていたよりも光がもっと明確になっていたり、逆にふわっとした光になっていたりするので、その独特の光加減みたいなものが写真をより曖昧にしているなと。目で見ていた光景とは少し違った写真にしかない景色になっているので、撮ってみないとわからない。自分が撮ったはずなのですが、撮っていないような感覚とか言いますか。それが、宝くじみたいな感覚で楽しいです。
ーーゆえにフィルムカメラは難しいとも言ってましたが、連載何回目ぐらいでカメラに慣れてきましたか?
3回目ぐらいから「なんかいい写真じゃない?」と思えてきましたが、かと言ってずっと継続していい写真が撮れていたかと言われると…真っ暗で何も映ってないような写真もありますし…。フィルムカメラを通して、何事も慣れたと思ったときが一番怖いんだなと改めて感じました(笑)。
ーーそんな“I/my”が詰まった今回のフォトブックで高杉さん自身がお気に入りのカットは?
これです。
僕、引き画が好きなんですけど、これがめちゃくちゃ僕っぽいなと思って。その僕っぽさみたいなものは、後ろ姿の“足”の感じですかね。ちょっと言葉で伝えるのは難しいのですが、この足がまさに僕だなって。こんな写真も普通ならカットするしカットされる写真なんですよ。あとは長崎の坂っていうのもあって、すごく良い写真だなと。この瞬間をフィルムカメラで切り取れたことに驚いています。あとはこういう表情をするなっていうのはたくさんあるのですが…一つ挙げるとしたら、僕よく唇を尖らせてるんだなって。キメてない分、素に近いからこそ、滑稽な写真もめちゃくちゃ多いので必見です(笑)。