コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、ガンガンコミックスBLissで連載中の中華風ファンタジー作品「千年紀末に吠える恋」(スクウェア・エニックス刊)をピックアップ。
作者のみよしあやとさんが6月28日にX(旧Twitter)で同作を投稿(X掲載時のタイトルは「死んだはずの最愛の幼馴染と敵国の将が瓜二つだった話」)。そのツイートには2.8万以上のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事では、みよしあやとさんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
身体は愛しの人そのもの。でも中身はまるで別人で…
かつて大国として栄えたルーシアンは、国を分断する山脈を境に「北の蒼」「南の朱」に分かれてからというもの、戦争を繰り返していた。孤児として国の養育機関に引き取られた天陽(てんよう)は、幼い頃から暗殺術を教え込まれ、幼馴染の雨流(うる)とともに武勲を挙げようと切磋琢磨していた。
ある時、雨流は敵国の攻撃を受けて瀕死状態となり、現実を受け止められない天陽に対して「命を果たして生きろ、天陽。生きて幸せになってくれ…」という言葉と口づけを遺し果てていった。
雨流の死から2年たったある日、北の蒼国にひとり乗り込んでいった天陽は、将軍・欠月(かけづき)の首をとるため天幕に奇襲をかけた。そこで対面したのは、戦死したはずの雨流とそっくりな欠月の姿だった。
「この男が欠月なのか――?どう見ても雨流じゃないか――」
混乱状態の天陽とは裏腹に、欠月は天陽の身体を縛り上げ、「喋らねえならこのいらねえ首、はねてやってもいいんだぞ」と脅迫する。
天陽の決闘処刑が執り行われることになり、欠月と直接戦う機会を得たが、ふたりは互いの太刀筋が手に取るように分かってしまい、一向に攻撃がはまらない。欠月の中に確かに雨流を見た天陽は、あまりにも残酷で信じがたい蒼国の"秘密”を知ることになる――。
実際に作品を読んだ読者からは、「え、どうなるの?どういうこと?って展開で、読み進める手が止まらないです」「途中から涙が止まらなくて…大好きです!」といった感想が多数上がっていた。
中華ファンタジーは「子供の頃の自分の憧れの昇華」—―作者が語る制作の背景
――「千年紀末に吠える恋」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
子供の頃から中華ファンタジーが好きでいつか描いてみたいと思っていました。
なので『子供の頃の自分の憧れの昇華』が一番の理由なのかなと。
あとはそこに大人になった自分の癖である未亡人受けと2番目の恋が好きというのを全力で乗っけたのが本作です。
コミックスのあとがきでも少し触れましたがBLって続編があってもコミックス1冊で一旦完結させたりすることが多く(勿論そうではない作品もたくさんあります…!)世界観の説明にページを割かないといけないスケールの大きな作品への挑戦はなかなか難しいです。
勿論これは自分の力不足が大きいので描ける機会を頂けるよう頑張り続けるぞという気持ちでずっといました。
ガンガンBLissさんからお話を頂いた時に「話数は気にせず、とにかく面白い1話をまずは作ってほしい」と言って頂けて、そこで初めて中華ファンタジーを描けるチャンスかもしれないと思いました。
現代物含めいくつかプロット案を出しましたが「どれが一番描きたいですか?」というのにここでしか描けない気がするので…と本作の初期案をあげた覚えがあります。
別の出版社さんから出して頂いた作品なのですが漫画家×大衆演劇役者な高校生同士の恋愛を描いた「まくあい!」という1冊がありまして、実はその作中に出てくる漫画の内容が初期案と繋がっています。
なので当然設定も全然違って(笑)最初は国を背負う立場から逃れられてよかったと思っている攻めに対して王になることを諦められない受けという亡国の皇子同士でした。
女装の姿で旅をしながら国を滅ぼした仇に復讐してまわっている受けがしくじってボロボロになった所を攻めが劇作家をしている旅一座に拾われて…というお話です。
子供の頃読んでいたファンタジー作品ってやっぱり仲間と旅をしている事が多くて、だからきっと最初は旅に走ったんでしょうね。
そこからぽつりぽつりと「未亡人受けが好きで…昔の男には基本死んでてほしくて…それを経ての2番目の恋が好きで…それでさらに同じ顔だったらめちゃくちゃ萌えるかもしれません」という私の本性を吐露していった結果今に至ります。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
こだわりというと少し違うかもしれないのですが、あくまで架空の国なので作中に出てきていない所も含め色々と設定は決めています。
周辺も含めて地図を作り人種の混ざり方やそれぞれの気候を考えてみたり、敵対している国同士なので実際争うとしたらどういう風に攻める事になるのか…などなど。
中華風ではありますが中華風だからこう、という風にはあえてしていないです。自分だけの世界を作るのってやはり楽しいし建国したい。
見てほしいポイントは天陽と桃華の違いの部分です。
愛する人を亡くし、姿形だけが同じな屍器になってしまったその人を取り戻したいと願いもがいている。
同じ立場にある2人がそれぞれどこにたどり着くのか、この部分が恐らく今作のひとつの答えのようなものだと思っているので注目してもらえたら嬉しいです!
『結末を迎える中で対の存在にしたい』という事は都度担当さんにお伝えしていて、エピソードを紡いでいく時にも常にそこを考えて動かしています。
あとは欠月の情緒が育ち、愛しさを、愛しさの次は愛しいからこその悲しみや寂しさを、それぞれ覚えていく所、これはもはや見てほしいというより応援してほしい所です(笑)。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
シーンだと天陽が入れ墨を入れる所です。
どうしてもここは描きたくて1話を練っている頃から「絶対に入れ墨に苦悶するシーンは入れますので…!」としつこかったですね、本当に、隙あらばという感じで。
理由はシンプルに誰かのために苦悶する受けと自分ではない誰かのために苦悶する受けの姿に無意識下で嫉妬してその感情に気づかないまま行動してしまう攻めが好きだからです。
多分これは未亡人受けが好きという所と一本の線で繋がってる気がします…(笑)。
入れ墨をいれる動画見たり、工程を調べたり、昔の道具の造りから痛み度合を想定してみたりという所も楽しかったです。
セリフではないのですが作中に出てくる唄も気に入っています。どんなメロディーなのか、いつか聴くことができたら幸せだろうなと。
――本作では、激しくも繊細に描かれた主人公の心情が読む側にもダイレクトに伝わってきます。実際に「はじめから物語に引き込まれた」「続きが気になる」と多くの反響がありますが、読者からの反応をご覧になっていかがですか。
シンプルに嬉しいです!
続きものですし苦しい展開も多い作品なので読もうか迷う要素もきっと多いんじゃないかなと。
なので読みたいと思ってもらえた事、その上で実際読んでもらえた事がとても嬉しい。
当たり前の回答すぎるかもしれませんが素直にそれが一番です。
あとは本当に幸せになるのか…!?というのも結構見かけて「そうだよね、でも安心してね、作者はハッピーエンドが好きだから、ただちょっとその前にある程度苦しんでる所が見たいだけだから」と心の中から話しかけたりもしていました(笑)。
――今後の展望や目標をお教えください。
まずは最後まで、しっかりと自分が思う展開を描き切りたいです。
さきほども少し触れましたがハッピーエンドが好きなので、幸せにしたい。
愛した人が死んでしまっている、雨流と欠月という別々の存在の問題などがある以上どうあがいても完全な幸せは無理では!?という感じだと思うんです。
ただ私自身が人生の軸にしている「最高が叶わなくとも諦めずに最善をつかみ取る」という考え方の上でこれでよかったと思える、そんな最善の夜明けを迎えさせたいなと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
読んで楽しんで下さる方がいてはじめて漫画が完成すると私は思っています。
本当にありがとうございます。
これからも「千年紀末に吠える恋」をどうぞよろしくお願いします。
最後まで物語の夜明けを見届けてもらえますように…!
また、見届けたいと思ってもらえるよう執筆頑張っていきます!
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