満島ひかりが主演、岡田将生が共演する映画「ラストマイル」が8月23日に封切られる。民放公式テレビ配信サービス・TVerでは、映画の公開を記念して出演者の過去ドラマが配信中だ。その中でも、本作でタッグを組む塚原あゆ子監督と脚本家の野木亜紀子が手がけたTBSドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」の魅力を紹介する。
「アンナチュラル」「MIU404」に共通する社会派エンターテイメントとしての面白さ
8月23日に公開される映画『ラストマイル』は、世界規模のECサイトで働く男女が、11月のブラックフライデー前夜に発生した連続爆破事件に立ち向かうノンストップ・サスペンスエンタテインメントだ。
脚本家の野木亜紀子と塚原あゆ子監督がタッグを組み、TBSドラマ「アンナチュラル」(2018年)、「MIU404」(2020年)と世界線が交差するシェアード・ユニバース作品として公開前から注目を集めている。
「アンナチュラル」は、死因究明のスペシャリストが集まる研究機関“UIDラボ”が舞台。石原さとみ演じる法医解剖医の三澄ミコトたちが、死因がわからない遺体の声を聞き、原因を究明していく法医学ミステリーだ。
「MIU404」は初動捜査のプロフェッショナル“警視庁刑事部第4機動捜査隊”を舞台に、性格が正反対な伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)バディが24時間というタイムリミットの中で、事件の早期解決を目指す1話完結のノンストップ「機捜」エンターテインメント。
どちらも架空の機関が舞台であり、前者は“死”という結果から法医学の力で「何が起きたか」を探る物語で、後者は最悪の事態が起きる前に「何ができるか」を探る物語だ。正反対のアプローチながら、共通して描かれているのは大切な何か(人、もの、機会、尊厳など多岐にわたる)を理不尽に奪われた人々の姿だ。いじめやパワハラ、過労死、外国人労働問題、フェイクニュースなど、現代社会が抱える諸問題を浮き彫りし、視聴者にメッセージを届ける。
また野木脚本の最大の特徴は、骨太な社会派ドラマとしての側面も持ちながらエンターテインメントとしても優れている点だ。2作品とも二転三転するスリリングな展開の中に伏線を張り巡らせ、鮮やかに回収する見事な構成となっており、視聴者はみな画面に釘付けとなった。
「クソが!!」中堂をはじめとした魅力的なキャラクターにも注目
そしてもう一つの魅力は、個性豊かなキャラクターだ。「MIU404」はバディドラマとしても人気で、機動力と運動神経は抜群だが、考える前に身体が動いてしまうお調子者の伊吹と、理性的で観察眼に長けているが、自分も他人も信用しない陰のある志摩が、事件を追うごとに信頼で結ばれた最強のバディへと成長していく過程が堪らない。
塚原あゆ子監督の「中学聖日記」(TBS系)でデビューを果たし、本作でさらなる成長を遂げた水上恒司が演じるキャリア組の新人で、自信家だった九重世人が4機捜の面々と接する中で人間的な成長を見せる姿も多くの視聴者が愛情を持って見守った。
「アンナチュラル」にも、主人公・ミコトの良き理解者であり、UDIラボのムードメイカー的存在である臨床検査技師・東海林夕子(市川実日子)や、記録員として働く医大生で、ミコトに思いを寄せる久部六郎(窪田正孝)、自由すぎるメンバーに苦労しつつもいざという時に頼りになるUDIラボの所長・神倉保夫(松重豊)、いつも穏やかな笑顔を浮かべているがどこか怪しげな葬儀社の木林南雲(竜星涼)など、魅力的な登場人物が揃っている。
中でも視聴者から人気を集めたのが、ミコトと同じくUDIラボの法医解剖医・中堂系(井浦新)だ。いつも不機嫌で態度が悪く、「クソ」が口癖。コンビを組む臨床検査技師の坂本誠(飯尾和樹)にも暴言を浴びせ、パワハラで訴えられそうになるなど、なかなか人間性に問題のある人物だが、実は過去に恋人を亡くしており、その恋人を一途に思い続ける愛情深い一面もある。
そんな中堂をはじめ、「アンナチュラル」のキャラクターが「MIU404」に登場した回は大変な話題となった。2つの作品、そして23日に公開される「ラストマイル」の世界線はリンクしており、映画にも「アンナチュラル」と「MIU404」の主要キャラクターが多数登場する。TVerでは映画の公開に向けて、両作品が無料配信中だ。まだ観たことがない人はもちろんのこと、すでに視聴済みの方も「ラストマイル」鑑賞前の予習としてぜひチェックしてほしい。
■文/苫とり子