コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、9℃さんがX(旧Twitter)上に投稿した漫画「習い事のなっちゃん」だ。8月23日時点で1万以上のいいねがつく反響が集まり、話題となっている。今回は作者の9℃さんさんに制作の背景を伺った。
料理教室に生徒としてきたのは昔苦手だった友人…
主人公の梶 秀子は、料理教室の先生。
そこに生徒としてやってきたのは秀子が『習い事のなっちゃん』として記憶していた 内藤菜々恵。
実は幼少期、2人はピアノやバレエ、習字などさまざまな習い事が一緒だった。通っている学校や学年は違うけれど週の半分は顔を合わせる仲。秀子の両親が共働きなこともあり、なっちゃんの親が送迎をすることもあった。
そんな風に昔仲良かった2人だが、実は なっちゃんに対していい思い出ばかりではなかった秀子。端的に言って好きではなかったのだ。
秀子は、なっちゃんとの再会を機に昔の嫌だった出来事を色々と思い出す。
しかし、大人になったなっちゃんと関わっていくうちに今までの見方が変わっていく……。
実際に漫画を読んだ人達からは「全員見て下さい」「心が温まりました」「また素晴らしい漫画に出会っちまった」「伝えるって大事なんだなぁ」「ものすごい好きです!」と、いった声があがっている。
今回は、作者・9℃さんに『習い事のなっちゃん』の制作について話を伺った。
作者・9℃さんの創作背景とこだわり
――「習い事のなっちゃん」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
子どもの頃に私も色々な習い事をしていたのですが、当時仲良くしていたけれど習い事をやめてから全く繋がりのなくなった子たちのことをふと思い出したんです。
ふたりの再会やキャラクターに関しては完全にフィクションなんですけど、こういう出会いもどこかにあるのかもと思い描きました。
――「習い事のなっちゃん」を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
秀子となっちゃんそれぞれの表情を「わかりやすく描きすぎない」ことにこだわっています。
リアルな人間関係の中で、相手の表情から自分への気持ち・好感度を読み取るのってけっこう難しいなと思っていて。なっちゃんも、読み返すと秀子に負の感情を全く抱いてなさそうに見えるけれど、初見だとちょっと見下してるように見える気も…みたいな曖昧さで届いてほしいなと思って描いていました。
見て欲しいポイントは…子ども時代のふたりの格好や所作の描写から、性格や環境の違いが見えやすくなっていたら嬉しいです。箸の持ち方なんかもけっこう違うんです。
――今作で特にお気に入りのシーンやセリフなどがありましたらお教えください。
24ページ目で、アプリのフレンドになることを受け入れる秀子の「それくらいなら大丈夫」のセリフ・シーンです。
この言葉がこの作品のゴールというか答えなのだと思っていて、良し悪しとか好き嫌いとか友か敵かとかじゃない「それくらい」の関係でいられることが、少しだけ世界を柔らかくするような気がしています。
――漫画を描く際に大切にしていることや意識していることはありますか?
「みんなにみんなの事情がある」ということを良くも悪くも考えすぎる人間なのですが、作品を描くときにはそれが売りです!と開き直って、「敵味方をジャッジしない話」を描いていけたらなと思っています。
個々人の善悪の配分はまちまちだし、みんな優しい!みんな正義!とまでは思えないんですけど。それでも優しさの中の残酷さとか身勝手の中のいじらしさとか、生きてるからこその揺れを楽しく表現できたら嬉しいです。
――9℃さんの今後の展望や目標をお教えください。
いろんな話を通して、いろんな他人をどんどん描いていけたらいいなと思います。
そういう漫画をたくさんの方に読んでもらって、自分のことや他人のことを楽しく大事に思えるきっかけとしていられるようになることが目標です。
――最後に9℃さんの作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
あちこちでいろんな漫画を描かせてもらっているので、どれかひとつでも「自分のための物語だ」と思える作品を見つけてもらえたら嬉しいです。
まだないな…という方は、これからきっと描くので待っていてください。