長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『丑三刻鑑賞会』(フジテレビ)をチョイス。
静寂を失わない心霊番組『丑三刻鑑賞会』
心霊プロデューサーたちがこの2ヶ月の間に新撮してきた恐怖映像を、ホストの鈴木浩介、田中美保、好井まさおが鑑賞する、没入型心霊番組。ユニークなのが、映像の再生中、出演者たちが違和感を覚えた際に手元のボタンを押すと画面上に”!?”と表示されるというシステム。ワイプの代替ともいえるこのシステムだが、”没入型”を謳うにふさわしく、雰囲気を壊すことがない。静寂を失わない、と言ってもいいだろう。演者たちの悲鳴や野次で恐怖が緩和されることのない、シンプルに怖い番組なのである。
命を受けた心霊プロデューサーたちは各々、いわくつきの廃墟や、事故物件に行き、カメラを回す。特に一つ目の廃墟は雰囲気も抜群で、しかも首振りのカメラで撮影されており、緊張感が凄まじい。心霊映像において、カメラがパンするのは(なにかが起きる)ひとつの合図であり、それが延々に続くと心臓がもたない。この、カメラのパンが怖い、という、心霊映像をある程度見慣れた人に共通するであろう感覚を散々もてあそんでくるのが、ほんとにあった!呪いのビデオ103の『消波ブロック』。息切れするほど怖くて目をぎゅっと瞑っていた。児玉和土監督の『闇動画』も、そういった”タメ”が良質に機能するシリーズでないかと思う。闇動画めっちゃ怖いんでオススメです。『闇動画6』が怖すぎて、トイレに行くことができなくなり、オネショをしてしまったことがあります。本当です。
この番組は、オネショをしてしまうほどの強烈さは無いものの、ヤラセなしという謳い文句のとおり、「なにかおかしい」という違和感が通底している。このリアルな怖さが好みの人も多いだろう。私としても、何かが映っているかもしれない……と画面の隅々を注視するのが好き。前述のとおり、この番組には違和感ボタンシステムが導入されており、怪現象に気付けなくても、”!?”の表示を見て「えっ、いま何かあった?」と後追いするような見方ができたりもする。やっぱり心霊映像ってものは、まずその映像自体を真剣に見るというのが大事なのだ。ここで過去に何があったとかそういった考察は、ただの付属品に過ぎないのである。
それにしても、深夜にひとりで廃墟に行ったり、事故物件に寝泊まりしたり、仕事とはいえ、まったくよくできるものだと尊敬する。本当に呪われたら取り返しがつかないじゃないか。私なら1000万積まれたってやりたくない。でも2000万だったらやるかも、、、
■文/城戸