長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『バラバラマンスリー』(テレビ朝日)をチョイス。
番組内番組内番組……『バラバラマンスリー』
月曜日から木曜日まで、月替わりの隔週番組を放送する『バラバラマンスリー』。8月の木曜日は、ヤーレンズによる『田舎でヤレヤレヤーレンズ』(実際のタイトルは『ストレンジグラデーション』。)表向きのタイトルが存在している、という時点で、令和のテレビファンならお察しの通り、これはフェイク・ドキュメンタリーと呼ばれる作品である。
本作は全3話からなっているのだが、第1話から、もはやコテコテと言える演出のオンパレード。よそと違うことをするつもりはまったくありませんとでも言わんばかりの、いかにもトレンドを押さえた作りになっている。ただ、その中にも個性はあって、よその類似番組(誰しもが思い浮かべるのは『奥様ッソ』だろう)を比べ、本作はよりフィクションに振り切っている。人形がカメラに近付いてきたり、おばあさんが四つん這いで猛スピードでこちらに駆け寄ってきたりと、繊細に描写を積み上げ、ある真相をおぼろげに開示してゆくというやり方ではない、今、それそのもので怖がらせようという気概があるように思える。普通にぞっとするような怖いシーンがあったりするんで、私はずいぶんと楽しんで鑑賞することができた。
さて、わりあい真面目に語ってみたが、実のところこれはふざけた番組である。あまりにコテコテに思えた第1話も、第2話以降の急展開(そして、またしてもコテコテである)を見れば、なるほど、ジャンルそのものをオモチャにしていたのだと気付く。この、全編すべてを小馬鹿にしているような番組に、ヤーレンズががっちりハマっている。楢原が無限にボケて、出井が無限にツッコむ、その両者のやりとりは、どこか次元の超えた、他者の干渉を許さない空間として映る。番組内番組内番組……と深い入れ子構造になっている本作には、そんな”二人の世界”を作り出すヤーレンズが太い軸として君臨しているような感覚がある。どんな世界線でも、どんな怪異に晒されようとも、楢原はボケて、出井はツッコんでいる。このふたりの面白さが約束されているからこそ、ここまで自由な番組作りができたのだろう。ヤーレンズファンは勿論、彼らをよく知らないという人にも是非見てほしい番組である。
ともあれ変な番組だ。台風の襲来、家でこの番組を見て30分ニヤニヤするという過ごし方も悪くないはず。前述のとおり、普通に怖いシーンもあるので、苦手な人は注意されたし。
■文/城戸
城戸(きど)
X(旧Twitter):@sh_s_sh_ma1996年生まれ。映画を観るのが好きなフリーライター。オモコロなどWEBメディアを中心に活躍。
▼TVerで「バラバラマンスリー」を見る▼