1979年に製作され、映画史に多大な影響を与えただけでなく、ポップカルチャー全体にまで強烈なインパクトを残した映画「エイリアン」の“その後”を描く映画「エイリアン:ロムルス」が9月6日(金)より全国公開。このほど、日本語吹き替え版で主人公・レイン(ケイリー・スピーニー)の声を担当する戸松遥と、レインらと行動を共にするケイ(イザベラ・メルセード)役の内田真礼にインタビューを行い、「エイリアン」シリーズの印象やアフレコで苦労したこと、それぞれの身に起きた“エイリアン級”の恐怖体験などについて語ってもらった。
「エイリアン:ロムルス」は宇宙ステーション「ロムルス」を舞台に、人生の行き場を失い、生きる希望を求めてやって来た6人の若者たちに、逃げ場のない宇宙という密室で絶望をもたらす、宇宙最恐の生命体・エイリアンによる究極のサバイバル・スリラー。鬼才フェデ・アルバレス監督がメガホンをとり、“エイリアンの創造主”リドリー・スコットが製作を務めた。
戸松「今では『エイリアン』にロマンを感じています」
――世代を問わず、長年愛され続けている「エイリアン」シリーズ(過去作はディズニープラスのスターで配信中)との出会いはいつ頃ですか?
戸松:「エイリアン」デビューをしたのは小学校の低学年くらい。たしか日本テレビの「金曜ロードショー」で初めて見た記憶があります。怖いもの見たさと本当に怖いという恐怖心。そのせめぎ合いの中で、ちょっとだけ好奇心のほうが勝るタイプでした。子どもの頃は“怖いけど面白い”という印象でしたけど、大人になってあらためて見返すと作品ごとにテーマがあって。ただ怖いだけでなく、人類も考えないといけない課題や、子どもの頃は難しくて分からなかったことが理解できるようになって、今では「エイリアン」にロマンを感じています。
内田:子どもの頃は怖い作品に触れることができなかったので「エイリアン」は大人になってから見ました。エイリアンは風貌や動きに特徴があって、得体の知れない恐怖のようなものが詰まっている存在。でも、これが作品として世に生み出されたことがすごいなと。1作目を見た時に、映画館で味わえるあのドキドキ感を学生時代に体験しなかったことを後悔しました。エイリアンと人間の戦いはもちろん人間同士のドラマもしっかりと描かれていて、1人になったら危ないとか、映画的体験を全力で私たちにプレゼントしてくれる作品だと思います。
――今回、声を担当しているレインとケイはどんなキャラクターですか?
戸松:レインは、イメージ的にたくましい女の子という風に収録前は感じていたんです。でも、最初から強かったわけではなく物語前半は理不尽な労働を強いられながらもそれに屈せず、弟のアンディと一緒にそこから抜け出そうとしている一庶民。芯は強いけど優しい性格の持ち主で、前半と後半では印象が変わるキャラクターだと思います。まぁ、どうしても変わらざるを得ない状況に陥ってしまうんですけど(笑)、お芝居をする上では「ここから切り替えるぞ」という意識はありませんでした。順を追って録っていく流れの中で、私もレインと一緒に成長してたくましくなっていったような感覚です。
内田:ケイはレインたちと一緒に行動するのですが、ある秘密を抱えていて、後になって大きな問題になっていくんです。ケイに降りかかって来る問題は一人では抱えきれないくらい大変なもの。その思いや恐怖心を表現するのは本当に難しかったです。物語が進むにつれて、こうしなければいけない、やらなければならないということにケイ自身が向き合って戦うところがあって、その姿はとてもたくましいんです。そのたくましさと、どうしようもない怖さで感情がぐちゃぐちゃになる瞬間がありつつも、演じていて楽しかった部分でもあります。ぜひ、彼女の行く末を心して見守ってほしいです。
――アフレコで印象に残っていることはありますか?
戸松:実は今年一番のハイカロリーなアフレコでした(笑)。前半は等身大の女の子という部分を大事にしながら強くなり過ぎないよう抑えていましたが、エイリアンと遭遇してからはいろんなことが起きるので自然にたくましくなっていくんです。今回は吹替ということもあって演じている役者さんのお芝居をリスペクトしつつ、自分の感情や思いをどんなふうに声で表現していけばいいのか。役者さんの声を耳でちゃんと聞いていないと、言葉やリアクションを入れ損なってしまうことがあるんです。息を吸ったところが入っていなかったら録り直すなど、細かくチェックしていくことが大事でした。悲鳴を上げるシーンも多かったので何回か酸欠状態に(笑)。そういうときは深呼吸する時間を作ってもらいながら、自分のペースでアフレコできたのはとてもありがたかったです。
――悲鳴という点ではケイも大変だったような気がしますけど…。
内田:とにかく、これまで経験したことがないようなシーンが多過ぎて、大変でした(笑)。台本を読んだときから覚悟はしていましたが、そのシーンが近づくにつれてうまくできるかどうか、のどや体は大丈夫かなってドキドキしていました。悲鳴を上げている俳優さんに声をつける芝居ということで、人間としての情けなさ、思わず出てしまう音みたいなものを入れていくことが必要なのかなと。それは決してきれいな音ではないのかもしれないですけど、人間の本能の部分を抽出してアフレコに注ぐようなイメージで演じました。逃げたいけど逃げられない恐怖の音や、必死に戦っている感じが見ている方に伝わっていたらいいなと思います。
戸松&内田が体験した怖いエピソードとは
――今回、登場するエイリアンの印象はいかがですか?
戸松:時系列としては、シリーズ1作目と2作目の間という設定のストーリーですけど、製作されたのは今の時代ですから映像のクオリティーは間違いなく高いなと。エイリアンの攻撃の仕方も、まだこんな手があったのかとびっくりしました。これまで「エイリアン」シリーズを見てきた人たちにも、まだまだ新たな恐怖を感じてもらえると思います。
内田:もう、怖いという感想しかありません。本当に恐怖でしかなかったです。エイリアンがどういった作品なのか分かったつもりでアフレコをしていましたけど、まだこんな姿があるのかと。頭で理解するよりも先に行ってしまうような動きも含めてしびれる怖さでした。ただ、怖さはありつつもエイリアンの造形美がすごいなと思う自分もいて。フィギュアを買いたくなる気持ちが分かるなと感じるカッコよさがありますね。
――最近体験した“エイリアン級”の怖いエピソードはありますか?
戸松:家族でドライブをしたときにみんながトイレに行っている間、私が1人だけ車の中で留守番をしていたんです。そのときに車の屋根やボンネットに鳩がたくさん集まってきて。たぶん2~30羽ぐらいはいたと思います。実はこの世で一番苦手な生き物が鳩でして…。駐車場でゾンビに襲われた車みたいに鳩に囲まれてしまって。あれは、リアルホラー映画でした(笑)。
内田:今年の3月頃に観葉植物をいただいたのですが、全然育たなくて。今は葉っぱが1枚もついていないんです。何が原因なのか全然分からない。どうしたらいいのか困っています。もしかしたら、私の家に目に見えないエイリアンが潜んでいて葉っぱを食べてしまったのかもしれません(笑)。
◆取材・文=小池貴之
Happinet
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)