芝居に入る“前”の時間を大切にしている
――黒沢組を経験された感想を教えてください。
とにかく楽しい現場でした。スタッフの方もいきいきしているし、みんな楽しそうで。僕も一緒に作品作りをしていて、とにかくテンポが気持ち良かったです。例えばこの映画の中で、1シーン大雪が降ってるんです。クライマックスの直前で、お芝居していて視界が見えなくなるくらいの大雪でした。通常だとシーンが繋がらなくなるって大騒ぎになるところですけど、黒沢さんは慌てず騒がず、じゃあ撮りましょうって続けられて。でも、天気ってそういうものじゃないですか、こちらの意図と関係なく急に降ったり止んだりするもので、それが自然ですよね。完成した映画を見ても違和感はないですし。黒沢さんは現場で起こったことに対する反応のスピードが速くて、自由で楽しかったです。
――菅田さんが普段お芝居をしている上で心がけていることはありますか?
芝居に入る前段階の仕込みとして集中する時間は大切にしてます。用意スタートの瞬間に、急にピストルで人を殺すぞ、みたいにはなれなくて、人によってはパッと切り替えられる人もいるでしょうけど、僕はできない。じーっと無言で待っている時間は意外と大切です。
――では、この作品をご覧になった感想を教えてください。
めちゃくちゃ面白かったです。自分が出ている作品をそういう風に言ったことはあまり無かったですけど、めちゃくちゃ面白かったです。
ネット社会の闇がテーマだが…「追求したのは娯楽としての映画」
――本作はネット社会の闇という要素がありますし、孤独な主人公の不条理劇でもあり、娯楽としてのスリラー作品、アクション作品でもありますが、一番の主軸はどちらだと感じられましたか?
娯楽じゃないでしょうか。監督はネット社会の闇をテーマにしようとしてませんし、僕もそんな風には思ってませんでした。やっぱり黒沢さんならではのエッジは効いているし、刺激的な思想も感じるけれど、追求したのは娯楽としての映画だと思います。
――娯楽としての作品を作るうえで意識されていたことはありますか?
余計なことはしない、ということですね。いわゆるアドリブなどせず、監督の指示通り動いていただけです。台本が面白いので、他に余計なことをする必要がないというか。作品を見ていても思いますけど、黒沢さんの頭の中が一番面白いので、もうそこにお任せして僕はそれを体現するだけでした。
――最後にこの作品のどんなところをどんな方に見てほしいか教えてください。
この作品は決して怖さだけじゃない面白さがあるし、ユーモアもあるし、しっかりとエンターテイメントしてると思います。僕はクライマックスで爆笑しちゃいました。あとキャラクターが良くて、吉井を襲ってくる人たちが最高に面白いです。刺激的な映画体験をしたい方に見てもらえると嬉しいです。
◆取材・文=入江奈々
撮影=小川拓洋
ヘアメイク=AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
スタイリスト=KEITA IZUKA
ポニーキャニオン
発売日: 2024/03/08