コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介は、ねこまき(ミューズワーク)さんの書籍「ねことじいちゃん」の9巻より「くすりの時間」を紹介する。
書籍「ねことじいちゃん」は、海の見える島にある”ねこの町”に住む大吉じいちゃんと猫のタマが主人公。猫たちと大吉じいちゃんの何気ない日常を、優しいタッチで描いている。
作者であるねこまきさんが8月22日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、8,500件を超える「いいね」が寄せられた。本記事ではねこまきさんに、作品のこだわりなどについてインタビューをおこなった。
大吉じいちゃんが錠剤を取り出した瞬間、猫たちからの鋭い視線が…
大吉じいちゃんが錠剤を1錠ずつ取り出していた。視線を感じて目線を上げると、4匹の子猫たちがじっと見つめている。大吉じいちゃんは薬を食べられないように手を握るも、子猫たちはしきりに手の匂いをかいでくる。慌てている間に、1匹の子猫が薬を飲むための水の入っているコップを倒してしまう。怒涛の展開に大吉じいちゃんは「も~」と声をあげることしかできないのだった。
本作を投稿したX(旧Twitter)には「猫さんと一緒に生活しているところでのあるあるですね!」「自分でひっくり返しといてしっぽボッ!が愛おしい」「かわいい孫猫?に囲まれるじぃちゃんたまりません」などのコメントが寄せられている。
『「ねことじいちゃん」は多くの人の力と思いが込めてられている作品です』作者・ねこまきさんに漫画へのこだわりをインタビュー
――「ねことじいちゃん」シリーズを創作したきっかけや理由があればお教えください。
12年前母が他界しました。その時に見た父の姿が「ねことじいちゃん」を描くきっかけです。長年連れ添った妻を亡くした喪失感を猫が埋めてくれる物語となりました。じいちゃんだけが知る妻との思い出を猫に話して聞かせながら、穏やかに過ぎていく時間を描いています。
主人公の大吉じいさんが住む、縁側から海が見える家は、私が子供の頃に数回訪れただけの母の実家です。その風景が大人になってからもずっと忘れられずいつか漫画にできたらと思っていたので、「ねことじいちゃん」で描けたことがとても嬉しいです。
――本作「くすりの時間」を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
猫を飼っておられる方には「あるある」中の「あるある」行動なのですが、実際に私が薬を飲む度に錠剤を取り出すパチっという音を聞くと猫たちが寄って来るものですから、そのことを大吉じいちゃんと子猫に置き換えて漫画にしました。
今では薬は猫に隠れてこっそり飲みます。子猫だけでなく大人になった猫も飼い主の行動に敏感で飼い主が手に持っているモノ、食べているモノ、見ているモノに興味津々。それの正体を確かめずにはいられないようです。寄ってくるのは可愛いのですが、来てほしくない時に限って寄ってくることも多いので困ったものです。
――温かみのある画風が素敵ですが、漫画やイラストを描くうえでこだわっていることがあればお教えください。
こだわりと言う程ではないのですが、誰もが子供の頃使ったことのある、鉛筆と水彩絵の具を使うことでなんとなく親しみやすさが出ているのかもしれません。
――書籍「ねことじいちゃん」は長く愛される作品となっていますが、ネタづくりはどのようにされているのでしょうか。
主に私の父と、義母(夫の母)の思い出を参考にしていますが、昭和12年生まれの工藤さんという方にも取材協力をお願いして、当時のエピソードを描かせていただいたり、担当編集さんのご両親のお話を聞かせてもらったりしながら、それらを元に担当編集さんと私たちで練り上げています。さらに1巻から装丁デザインを担当くださっているデザイナーさんも加わり、「ねことじいちゃん」は多くの人の力と思いが込められている作品です。いつも皆さんに助けられながら1冊を作り上げています。
――今後の展望や目標をお教えください。
できることなら、私が鉛筆を握れなくなるまでずっとねことじいちゃんを描き続けられたら嬉しいです。そうしたら大吉じいさんは100歳超えちゃいますね。タマに至っては猫又になってるかもしれません(笑)。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
「ずっと読んでいます」とおしゃっていただくことが多くなり、嬉しいです。こんなに長く描かせていただいけて本当にありがたいことです。人生いいことばかりじゃありませんが、漫画の中だけでも穏やかに過ごしたいと思って描いております。よろしければこれからもお付き合いください。