コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『死んだ双子の兄が幽霊になって還って来た話』を紹介する。作者のmeroricoさんが、8月12日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、1.7万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、meroricoさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
死んだ双子の兄の“一生のお願い”を聞く弟
双子の兄、さとるが死んだ。しかし双子の弟であるしずかの隣には、幽霊になったさとるがいる。そのため、さとるが死んだという実感がまるでなかった。
事の発端は昨晩。「よっ!しずか」と言ってさとるは、しずかの前に現れた。「なんかさ、俺死んだけど心残りがあって死にきれねーって思ってたら心残せたみたい」としずかは生前と変わらない笑みを見せる。
そんなさとるの心残りは、恋人の晶だった。さとるが死んでから落ち込んでいる晶は、両親も亡くしているため、一人になってしまった。しかし、晶は幽霊のため何もしてあげることができない。
そこでさとるはしずかに、晶を気にかけてほしいという“一生のお願い”をした。しずかは、死んださとるの最後の頼みを聞くために、晶に会いに行くことに。
晶の家の近くまで行くと「あ、晶!」とさとるが嬉しそうな表情を浮かべる。そこには、青白い顔をしている晶の姿があった。
しずかが挨拶をすると、「偶然じゃあないよね」「さとるの荷物でも取りにきた?」と聞く晶。しずかは「あきらさんが落ち込んでるって聞いたから見にきた」と伝える。
すると「それは随分と酷なことを言うんだね」「遺族の君に他人を慮る余裕なんて無いだろうに…」と雨垂れのようにポツポツと喋り始めた晶。彼はさとるよりも幽霊のような暗い雰囲気を漂わせていた。
そんな晶に、「寒いから部屋あげてよ」とお願いし、しずかは部屋にあげてもらうことに。さとるの部屋に案内してもらい、さとると話をしていると、部屋の扉をノックして入ってきた晶。そして、「この部屋手離そうと思うんだ…」と話し始めて――。
この漫画を読んだ人たちからは、「どうしよう。切ない。泣く」「やばい涙止まらん」「べっしゃべしゃに泣いてしまうよ」「全人類読むべき…」など、多くのコメントが寄せられている。
meroricoさんのこだわりは“暗い話はできるだけ明るく淡々と”
――『死んだ双子の兄が幽霊になって還って来た話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
特に大きなきっかけはありませんが、「この人がいないと生きていけない」と思えるほど大切な人がいた場合、その人を失ったとき、どのようにして悲しみや喪失を受け入れて生きていくだろうか…とか、遺される者と遺していく者、どちらの方が心残りが大きいのだろうか…と夜寝る前に考えることがあり、そうした思いを物語に落とし込んだのがきっかけです。
――しずかにしか聞こえない声で、「ただいま」と言った時のさとるの表情が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
ありがとうございます。そのシーンは私自身も気に入っているので、そう言っていただけて嬉しいです。テーマが「身近な人間の死」という重い内容なため、どうしても暗くなりがちですが、暗い話を描く時はできるだけ明るく淡々と描くことを心がけています。「遺影はしゃぎすぎ、イエーイ」や「幽霊になっても面倒くさいな」といった適度にくだらないセリフをテンポよく挟み込み、全体のトーンが暗くなりすぎないように描くことにこだわっています。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
気に入っているシーンは、壁から逆さまに生えている幽霊のさとると、その状態にも動じることなく受け止めている弟のしずかの場面です。お互いの現状や性格がわかりやすく表現できたと思っています。また、「ただいま」のシーンも特に気に入っています。この漫画を描く際に、最初に頭に浮かんだのがこのシーンだったのでとても印象深いです。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか。
夜寝る前の瞑想時間にアイデアが浮かぶことが多いです。もっとも、翌朝になると忘れてしまうことも多いのですが。また、一つの物語を考えた際に選ばなかった分岐点を出発点にして、次の物語を考えることもよくあります。何も思いつかない時は映画や歌の歌詞を眺めてヒントをもらったりしています。
――作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか。
今作では、静寂を感じさせる画面作りを意識しグレースケールで描いています。背景の線を簡略化し淡白な雰囲気を出すために試行錯誤しました。今描くと、また異なるアプローチになるかもしれませんが、その変化も楽しみながら制作しています。
――今後の展望や目標をお教えください。
物語を考えたり、人物を描くことがとにかく好きなので、描くことが尽きるまでは描き続けたいと思っています。私の作品が誰かにとって大切な物語になってくれたらとても嬉しいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
私の創作に10年以上お付き合いいただいている方、この作品で初めて出会ってくださった方、皆さま拙作を読んで下さり本当にありがとうございます。趣味で細々と漫画を描いてきましたが、最近では多くの方に読んでいただけてとても嬉しいです。この漫画は現在未完ですが、きちんと完結させて改めてお届けできるように頑張ります。