俳優の吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、烏丸せつこ、でんでん、そして呉美保監督が9月21日に都内で開催された映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の公開記念舞台あいさつに登場。キャッチコピーにちなんで、それぞれが“今、誰かに伝えたい気持ち”を語った。
五十嵐大氏による自伝的エッセイを呉監督が実写映画化
映画「そこのみにて光輝く」(2014年)などで知られる呉監督にとって9年ぶりの長編作品となる同作は、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子どもという意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大氏による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を映画化した物語。吉沢は耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大を演じる。
今回は五十嵐大を演じる吉沢をはじめ、大の母・明子役の忍足、父・陽介役の今井、祖母・広子役の烏丸、そして祖父・康雄役のでんでんと“五十嵐家”が全員集合。舞台あいさつ終盤のフリップトークのコーナーでは、本作のキャッチコピーである「伝えられない想いがあふれだす」にちなんで、呉監督含め全員がそれぞれ「今、誰かに伝えたい気持ち」を発表した。
9年ぶりの長編映画が9月20日に公開を迎え、9年ぶりに公開後の舞台あいさつに臨んだ呉監督は『出会ってくれて、ありがとう。生まれてきてくれて、ありがとう!』と発表し、「9年前に長男を出産しました。夫と長男が今日映画を見に来てくれているので、夫に『出会ってくれて、ありがとう』、息子に『生まれてきてくれて、ありがとう!』…泣くつもりじゃなかったのに」と涙で言葉を詰まらせながら説明し、家族に感謝を込めた。
続いて、でんでんは『会場にいるスタッフ、キャストそしてお客様皆様にありがとうございます。(ヤッターと言いたい)』とつづり、「本当にただただ皆さん方にありがとうございました、と。いい作品で、皆さん方も今日は良かったんじゃないかなと思いながら、こんなことを書いています。月並みのことでどうもすいませんでした!」と語った。
一方、烏丸は「個人的なこと過ぎました…」としながら、『虹の橋を渡った皇子くんへ 元気にしてますか 待っててね~』と2023年に亡くなった愛猫へ向けた気持ちを発表し、「何でこんな個人的なことを書いたんでしょう(笑)。ごめんなさい!」と恐縮していた。
今井は「あまり期待しないでくださいね」と前置きし、真ん中に縦の点線が入った○とハートマーク、その間に○からハートマークへ向いた矢印が描かれたフリップを披露。「点線で分かれている〇が描かれていますが、“ふたつの異なる世界”を表しています。ふたつの異なる世界がくっつくときは、やはり壁や葛藤、軋轢があるけれど、結果それを越えてハートになるというようなイメージを皆さんに伝えたいなと思いました」と、図に込めた思いを伝えた。
吉沢「お母ちゃんに『ありがとう』だなと思って」
忍足は「ありがとう」とハートマーク付きで記し、「監督、出演者の皆さん、関係者の皆さん、スタッフの皆さんもさておきまして、今日来てくださっている皆さんに感謝の気持ちを伝えたいという思いで書きました。皆さんの今後の人生、家族、きょうだい、友達などその気持ちを伝えることは本当に大事なことだと思っています。本当にありがとうございます」と映画に関わるすべての人と、公開2日目の朝から見に来てくれた観客に感謝を込めた。
そして吉沢も同じく「ありがとう」と発表し、「そりゃそうなんですよ。すごいですね、親子でね」と“母”と被ったことに照れ笑い。続けて「もちろん集まってくださった皆さんへの『ありがとう』もありつつ、僕はもうお母ちゃんに『ありがとう』だなと思って」と自身の母親への感謝であることを打ち明け、「なかなか親に『ありがとう』とかって言わないじゃないですか。言えないので、こういう場を借りて。うちは男4人兄弟で、めちゃくちゃうちのお母ちゃんは苦労していたと思うんですけど、ここまで立派に育ててくれたんで、ありがとうございます。『ありがとう』と伝えます」と時折はにかみながらも、母親に対して最敬礼で感謝の言葉を送った。
あらためて、最後に吉沢は「今日この作品を見て、良かったなと思っていただけたら、ぜひご家族だったり、友達だったり、恋人だったりとか、身の回りの方々にぜひこの作品の良さを伝えていただいて、また一緒に劇場に足を運んでいただけたらと思っております。これから皆さんと共にこの映画を盛り上げられればなと思っておりますんで、ぜひよろしくお願いいたします」と観客に呼び掛け、締めくくった。
映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」は全国公開中。
◆取材・文・撮影=月島勝利(STABLENT LLC)