長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『有吉ジャポンII ジロジロ有吉』(TBS)をチョイス。
この世には家が多すぎる『有吉ジャポンII ジロジロ有吉』
ディープなジャパニーズカルチャーを深堀する深夜番組、『有吉ジャポンII ジロジロ有吉』。今回のテーマは、いま若者を中心に浸透しているという”スペパ”だ。スペース・パフォーマンスを意味するこの言葉は、主に住居やオフィスに使われるもので、限られた狭い空間で最大限のパフォーマンスを発揮しようという考え方。なるほど、確かに、コスパ、タイパに続いてすぐにでも浸透しそうな、普遍的な価値観である。
番組内で紹介される人々は、とにかく狭い家に住み、器用に日常生活を送っている。興味深いのは、別に家賃の安い物件というわけではないということで、たとえば洋室3畳(+ロフト2畳)の部屋に住む平田さんの家賃は84,000円。祐天寺徒歩8分という土地柄もあるだろうが、部屋そのものを考えると、決して安くはない。しかし、平田さん本人もそうであるように、今の若者たちは、古くて安い家よりも、多少手狭でも高くて新しい物件に住みたがる傾向にあるという。つまり、コスパよりスペパを優先するということなのだ。
へえ~。もちろん、特段おかしな考えではないだろうが、3畳とはいくらなんでもやりすぎに思えてしまう。私はとにかく狭い家で育った為、広い住居には未だにコンプレックスがあるのだ。一軒家に住んでいる人を見て、一体毎日どんな気持ちなのだろうと、口をポカンと開けてしまう。それほど、広い一軒家に住む、というのが、私にとっては非現実的なのだ。あと屋上がついてる人ね。屋上付きの一軒家に住む至福を、私と同じ種族の生物が享受しているという事実が受け入れがたい。嫉妬心で言っているのではなく、そんなことが現実に起こるのかととても信じられないのだ。
しかし、屋上付きの一軒家に住んでいる人はたくさんいる。外を歩けば、どこもかしこも一軒家だらけだ。一軒家を建てるというのは、その家主の人生においても重要なターニングポイントだ。一生に一度、あるかないかの出来事だろう。しかし、住宅街を歩くと、あまりにも家が多すぎる。どれだけの人間のターニングポイントが立ち並んでいるのかと、この途方もなさに心が躍ったり、うんざりしたりする。
私は安くて広くてキレイな家に住みたい。庭もあって、屋上もあるとなお良い。全部のパフォーマンスを最大に。私はここに、ゼンパという新たな概念を提唱する。
■文/城戸
城戸(きど)
X(旧Twitter):@sh_s_sh_ma1996年生まれ。映画を観るのが好きなフリーライター。オモコロなどWEBメディアを中心に活躍。
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