毎年10月31日の夜に行われる祭り、ハロウィン。歴史をさかのぼれば、現在のアイルランドなどで暮らしていた古代ケルト人による夏の収穫を祝い、また死者の魂が帰ってくる日のための行事が起源の一つといわれている。日本では、カボチャで作ったランタンなどを飾り、子どもたちが仮装して近隣の家を回ってお菓子をもらうというアメリカで定着した風習が広まり、今では大人も仮装して楽しむ一夜に。そこで今回は、ほんのり笑いが挟み込まれて楽しくなれるホラー映画をはじめ、友人や家族とのパーティー、あるいは一人でひっそり過ごす人にもおすすめしたい、ハロウィン気分を盛り上げるホラー映画を紹介する。
ハロウィンの仮装のテーマになっているゾンビやヴァンパイア
ハロウィンの仮装といえば、映画などのヒーローやプリンセスも人気だが、もともとは先祖の霊と一緒に悪霊もやって来るという伝説から怪物やオバケになって追い払うという魔除けの意味が。それが“ホラー”な雰囲気の一夜を演出する。まずはそのホラー的仮装で代表的な、ゾンビ、ヴァンパイア(吸血鬼)、魔女が登場する映画からピックアップ。
死体がよみがえって生きている者を襲うゾンビは、ホラー映画やドラマで人気のジャンルとなっているが、それだけに物語の展開も多彩で、コメディーよりのものも多数ある。「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)は、家電量販店に勤める主人公がある日突然町に増えたゾンビから家族や親友、恋人を守るため戦うストーリー。最初、ゾンビとすれ違ったり、町が荒れ始めたりしているのに主人公たちが全く気付かない様子が笑えて、やがて怖さと対峙(たいじ)していく中に絆や悲しい別れ、頼もしさというエンタメ性がたっぷりだ。
ロードムービー風の「ゾンビランド」(2009年)は、主人公が設定するウイルスによって人々がゾンビ化した世界で生き抜くためのルールが、「フライパンでぶっ叩け」「静かに行動すべし」「後部座席を確認しろ」など、まさにゾンビ映画あるあるで面白い。なお、続編「ゾンビランド:ダブルタップ」(2019年)では、制作スタジオのコロンビア・ピクチャーズを象徴するオープニングの女神“コロンビアレディ”が襲い掛かってくるゾンビを持っていたトーチで殴り倒す遊び心あるものになっている。
また、「マギー」(2015年)は、日本でも“シュワちゃん”の愛称で親しまれるアーノルド・シュワルツェネッガーが製作・主演を務めた初のゾンビ映画。感染するとゾンビ化してしまうウイルスが蔓延する近未来を舞台に、最愛の娘・マギー(アビゲイル・ブレスリン)がウイルスに感染してしまった父親ウェイド(シュワルツェネッガー)の苦悩と家族愛を描く。アクション映画で世界を救ってきたシュワルツェネッガーが何もできないもどかしさを抱え、変わりゆく愛娘に対して究極の決断を迫られる様を丁寧に演じている。こちらはゾンビドラマの金字塔「ウォーキング・デッド」でも知られるヘンリー・ホブソン監督がメガホンをとったこともあり、リアルなゾンビ描写に加え、人間ドラマとしても考えさせられるものになっている。公開当時、シュワルツェネッガーは「ゾンビ化していく娘に対して、何もできない。この無償の愛を描いた作品は新しいゾンビ映画であると同時に、自分にとって大きなチャレンジだったが、ぜひやってみたいと思った」とコメントしていた。
続いてヴァンパイアものでは、「ダーク・シャドウ」(2012年)。ダークかつポップな独特の世界観で人気のティム・バートン監督が、1960年代のTVシリーズを映画化した作品で、ジョニー・デップが魔女の呪いでヴァンパイアに変えられ、200年後に目覚めた主人公を演じる。200年ぶりの世界ということで時代錯誤な振る舞いに笑ってしまう。「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」(2014年)は、現代で共同生活をするヴァンパイアたちの物語。ホラー映画でよく使われる、ドキュメンタリーを装ったモキュメンタリー形式の中に笑いが潜んでいる。
さらに、トム・クルーズとブラッド・ピットが吸血鬼役に挑んだゴシックホラー「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994年)もまた毛色が違うヴァンパイアもの。同作は、作家アン・ライスのカルト的な人気を誇る小説「夜明けのヴァンパイア」を彼女自身が脚本し、映画化。現代のサンフランシスコで若きジャーナリストのマロイ(クリスチャン・スレイター)からインタビューを受けた美青年のルイ(ピット)は、自らを「吸血鬼」と名乗り、18世紀末の米ニューオリンズで美貌の吸血鬼に魅入られ、不老不死になったという衝撃の半生をまことしやかに話していく…。トムとピットが扮する美しき吸血鬼もさることながら、話題作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」の好演でも注目されたキルスティン・ダンストが、当時12歳で少女の吸血鬼を悲哀たっぷりに演じているのも感慨深い。
魔女たちが巻き起こす騒動
ハロウィンの夜がメイン舞台になる「ホーカスポーカス」(1993年)は、ベット・ミドラー、サラ・ジェシカ・パーカー、キャシー・ナジミーが魔女の3姉妹に。不死のために子どもばかりを狙って処刑された彼女たちが300年後によみがえり、ある少女の命を狙い始める。演技達者な俳優陣が繰り出す笑いに引き込まれる。
「イーストウィックの魔女たち」(1987年)も、今や大ベテランの俳優たちによる演技が見もの。ジャック・ニコルソンがダンディーな悪魔の主人公で、スーザン・サランドン&ミシェル・ファイファー&シェールが演じる不思議な能力を持つ3人の女性たちと四角関係を繰り広げるブラックコメディー。監督を務めたのは、シリーズ最新作も話題となった「マッドマックス」などでおなじみの巨匠ジョージ・ミラー。奇想天外、セクシーな魔女たちのやりとりで笑えるだけではなく、SFXを駆使したダイナミックな映像で視覚的にも楽しい。ちなみに同作は2003年に日本でも陣内孝則らが出演するミュージカルとして上演され、その後何度も再演されるなど日本のファンにも刺さった作品だ。
「特集:ハロウィンナイト」詳細ページ→こちらをクリック!
日本最大級の映画専門チャンネル「ムービープラス」
HP:https://www.movieplus.jp/
X:@movie_plus
YouTube:https://www.youtube.com/@MovieplusJpCS