モンスターvsモンスターにゾクッ
だが、本作の真の見どころはそこからだった。紗江の担当カウンセラー・梅本ますみ(美波)と会った亮子は、彼女の「頑張ってよ」のひと言が最後の引き金になったと迫った。
紗江が自殺する直前、塩屋と電話し、一度切ってから再び話そうとしたとき間違えてますみに電話していた。そこでますみは引き金となる言葉を放ったのだ。
ただ、その証拠はなく、「だから法廷には上げなかった」と亮子。続けて低い声で「人殺し」とささやいた。
「過重労働やパワハラを受けるうちに判断能力を失い、会社を辞める選択肢を失ってしまう。そうやって視野の狭い、細くて深い暗闇にはまり込んでしまったら、かける言葉によっては、クライアントは壊れてしまう。それを知っているあなたはクライアントを救い出せる」。裁判の証人として出廷したとき、そう話した亮子に「責任を感じています」と返したますみ。すると亮子は、耳元で密かに「うそつき」とつぶやき、ますみが驚いた表情を見せると「図星かよ」と言っていた。
それがつながった場面だ。ますみが引き金を引いた理由は定かではない。しかし、「頑張ってよ」と言ったあとに、つながったままの電話から紗江が車と衝突した音が聞こえて、びっくりしたもののその後にほほ笑みが浮かんだのにはゾクッとした。裁判ではパワハラする“モンスター”と対峙したが、その裏に潜んでいたもう一人の“モンスター”の存在があったのだ。
亮子は杉浦が東大法学部卒と知って「すご~い、尊敬で~す」と棒読みで言い、陰で「(尊敬)してないし」とバッサリ切り捨てたのは、小悪魔的だった。また、ますみへつぶやく姿には凄みがあった。趣里の演技のうまいところだ。
そんな亮子がこれからどんな“モンスター”たちと対峙していくのか。杉浦や圭子の存在もだが、無敗の最強弁護士と言われながら失踪中の亮子の父・粒来や、亮子に協力するハッキングが得意なコンビニ店員・城野尊(中川翼)も個性的で面白くなっていきそうだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部