泰山(遠藤憲一)からにじみ出る、酸いも甘いもかみ分けたからこそのチャーミングさ
「民王」から9年後を描く「民王R」。温泉にのんびり浸かり、湯上りには冷たい牛乳を飲み「政治はやりきった」と、早くも引退モードの泰山。内閣総理大臣を務めていた時代は過去のものになったようで、ギラギラしていた部分はすっかり影を潜め、盟友・カリヤンこと狩屋とお気楽な会話を交わしているところに、突如、民政党最大派閥のドン・二木から呼び出され、総理になるよう命令されてしまう。
書生の田中丸に、もう一度総理を目指さないのかと言われたときには「浮ついた気持ちで総理を目指すべきではない」と達観したことを言っていた泰山だったが、二木と面会したあとは、「歴史に名を残したい!とりあえずでもいい、自分の名誉のために!」とコロッと言うことが変わり、総理大臣を目指すことに。しかも「(総理を)とりあえず、やっちゃおうか」と、かなり軽い、というかチャラい……のだが、そんな泰山が、なんだかチャーミングに見えてきてしまうのは「民王」同様。いや、さらにパワーアップ。
いい加減なように見えて、泰山の心の奥の奥の奥には政治への理想がちゃんとある。演じる遠藤が、せりふで言わずとも、たたずまいでそんな泰山を体現。ちょっと情けないところも愛おしく、引退を考えるくらいの年齢になった男性の酸いも甘いもかみ分けたからこその色気みたいなものがにじみ出ている。
あの、大橋和也がフレッシュな演技を披露
そんな泰山の側近役であの、大橋和也がフレッシュな演技を披露しているのも見どころ。あのが演じる優佳は、銀縁メガネにカッチリスーツ。前任秘書・貝原茂平の推薦というだけあってか、毒舌なのも貝原に劣らない。
あのは制作発表記者会見で、「優佳は社会に対して不満を持っている役。僕もどいつもこいつもくそったれと思っているので、一心同体みたいな気持ちです」と話していたが、その言葉通り役柄にぐっと入り込み体当たりの演技を見せ、意外なコメディエンヌぶりにも驚かされる。
なにわ男子のメンバーとしても活躍する大橋は、泰山の後援会長である父のコネで書生となった田中丸一郎太を演じる。泰山の言動にツッコんだり素朴な疑問を口にしたりと、視聴者とドラマの間を埋めるような存在で、アクの強いキャラクターの中で一服の清涼剤。
優佳にほのかな恋心を抱くのだが、ふと彼女を見る表情に恋心だけでなく、生来の優しさや気遣いまで感じさせ“育ちが良くピュア”という役柄をごくごく自然に繊細に演じている。
ほかにも、エリートなのに豆腐メンタルの猫田や永田町のプリンス・白鳥翼、コワモテイクメン刑事・新田ら、「民王」からのおなじみキャラ、「民王R」からの新キャラが入り乱れ、毎話、総理大臣が国民の誰かとランダムに入れ替わってしまうという“未曾有”のストーリーを盛り上げる。
その奇想天外ぶり、入れ替わりの絶妙な演技に何も考えずに大笑いするだけでなく、今の世の中や自身の生き方について考えさせられたり、ふとホロリとさせられたりもする「民王R」は、10月22日(火)夜9時より放送される。