大賞受賞作は「応援したくなるさわやかな結末」(井上由美子)
また、今回の選考委員を務めた岡田惠和、両沢和幸からも講評が。両沢は「人間の心情の変化を描ききるのは難しいものですが、それこそがラブストーリーの王道。戸成なつさんの作品は、それをきちんと貫いてるところがすごくよかったと思います。非常に楽しんで読みましたし、うまくキャスティングすれば、コミカルで面白いラブストーリーになると思います」とエールを。
岡田は「選考の中でも楽しく読んだ3作が残って、個人的にもうれしく思っております。大賞受賞作は全体的に駆け抜けた感があって強引なハッピーエンドも非常にいいなと思いましたし、ちょっと泣きました。ヒロインが何かをあきらめるというラストに爽快感があり、素敵だなと思いました」と、大賞受賞作を絶賛した。
さらに、授賞式には参加できなかった井上由美子もコメントを寄せ、「厳しい選考を勝ち抜いた3人の作品は、ラブストーリーというテーマを自分に引き寄せ、多くの人を楽しませる作品を生み出そうという意欲を感じました。
戸成なつさんの大賞受賞作はここ数年、ドラマで取り上げられる機会が増えた“推し活”を題材にしていますが、推される側の心情を丁寧に描くことで新しい切り口を獲得し、他の推し活ドラマとは一線を画していました。夢をあきらめながらも一歩踏み出すラストは、通り一遍のハッピーエンドではなく、応援したくなるさわやかな結末でした」と振り返った。
その上で両沢、岡田両氏から語られたのは、映像化に際してお笑い芸人のネタやアーティストの楽曲などを「面白いもの」「素晴らしいもの」として描くことの難しさ。戸成氏は自身もお笑いが大好きでリスペクトがあるからこそ、登場人物が大爆笑を取るネタの詳細をあえて描かなかったそう。その点について岡田は「もったいないけど自分もそうしたかもしれない(笑)」と明かし、難しいことにチャレンジした受賞者たちを称えた。
三者三様の賞金の使い道に笑いが
質疑応答では、大賞には賞金500万円、優秀賞には100万円が贈られることを受けて、受賞者3人に「賞金の使い道」について質問が。戸成氏は「昨日タイムリーに差し歯が取れてしまって(笑)。今日のために歯医者を何件も回って…みたいな(状況だったので)、いい歯を入れたいと思います」と思わぬ話が飛び出し、会場から笑いが起こる一幕も。
田中氏は「演劇をもっと見たいなと思っていて。今年4本見たんですけど、チケット代が結構高いので躊躇していけなかったものもあったので、もっと頻繁に演劇を見に行けるような生活をしたいなと願ってます(笑)」とコメント。
奈良氏は「12年物のノートパソコンをいまだに使っているので、新しいちゃんと薄いパソコンが買いたいなと思っています」と、商売道具となり得るものにしっかりお金をかける意思を明かした。