膨大な仕事をハイクオリティーでこなす“超人”
1978年公開(日本公開は1979年)の「スーパーマン」も映画音楽におけるウィリアムズのすごさを知らしめるものとなった。「スター・ウォーズ」同様、高揚感のあるテーマ曲が見る者の心を引きつけ、クリストファー・リーヴ演じるスーパーマンが飛んでいる姿が音からでも想像できるほど。
「スター・ウォーズ」第1作あたりからのウィリアムズの仕事量は“超人的”と言っていいくらいのものがある。しかも、どの作品も革新的でクオリティーが高いものばかり。1979年の「1941」、1980年の「スター・ウォーズ/帝国の逆襲(エピソード5)」、そして1981年には「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」というふうに続いていく。「レイダース」は総指揮ジョージ・ルーカス、監督はスピルバーグ、主演は「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役のハリソン・フォードという組み合わせで、そこにウィリアムズの音楽が彩られた。「インディ・ジョーンズ」シリーズの第1作となる作品だが、テーマ曲はもちろん、各シーンで聴こえてくる音楽も場面の雰囲気に合っていて、音楽が役者の演技をしっかりと“演出”しているのが感じられる。
1982年には「E.T.」も公開された。スピルバーグ監督による、地球に取り残された地球外生命体(Extra-Terrestrial)と少年エリオット(ヘンリー・トーマス)の交流を描いた物語で、自転車で飛ぶシーンの神秘性とワクワク感もウィリアムズの音楽がより増幅させてくれている。
1990年代も「ホーム・アローン」に始まり、1993年の「ジュラシック・パーク」「シンドラーのリスト」、1998年の「プライベート・ライアン」など、映画史に残る名作の音楽を手掛けた。「シンドラーのリスト」ではクラシックの要素を強めに押し出し、シリアスな作品に重みと深さを与えており、この作品でもアカデミー賞(作曲賞)を受賞した。
1999年に「スター・ウォーズ」シリーズの新たな三部作の始まりとなった「スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)」が公開され、テーマ曲はもちろん、劇中の音楽でウィリアムズらしさをしっかりと感じさせてくれた。
指揮者としても偉大なキャリア
そして2000年代。ここでまた新たな傑作を生み出している。2001年に「ハリー・ポッターと賢者の石」が公開され、その音楽をウィリアムズが担当。映画は大ヒットを記録し、メインテーマの一つとなった「ヘドウィグのテーマ」も多くの人に届いた。ウィリアムズはシリーズ3作目まで音楽を担当したが、4作目以降の音楽担当者も「ヘドウィグのテーマ」を受け継ぎ、作品内に用いている。あの不可思議なメロディーは「ハリー・ポッター」シリーズを象徴したものだと言える。
以降も「スター・ウォーズ」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズをはじめ、多くの作品の音楽を作り続けているウィリアムズ。だが、彼の功績は、映画音楽の作曲だけではない。1984年のロサンゼルスオリンピック、1996年のアトランタオリンピック、2002年のソルトレイクシティオリンピックに楽曲を提供し、ロス五輪の「オリンピックファンファーレとテーマ」はグラミー賞を受賞している。
それと指揮者としても偉大な経歴の持ち主で、1980年から1993年までボストン・ポップス・オーケストラの首席指揮者を務め、ボストン・ポップスの名誉指揮者でもある。かつて、クラシック演奏者から“映画音楽”は軽んじられていたことがあったが、映画音楽の素晴らしさをそういった界隈に知らしめたのもウィリアムズの大きな功績と言えるだろう。小澤征爾氏がボストン交響楽団の第13代音楽監督を務めていた頃から親交があり、2023年9月に約30年ぶりに来日し、長野で開催された「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」に出演して指揮者としてサイトウ・キネン・オーケストラと初共演を果たした。
映画史に残る名曲を生み出してきたジョン・ウィリアムズだが、彼が与えた影響はジャンルの枠を超えている。そういったウィリアムズの魅力を感じられるドキュメンタリー映画「ジョン・ウィリアムズ/伝説の映画音楽」はディズニープラスで日米独占配信中。
◆文=田中隆信
https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/music-by-john-williams/
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ユニバーサル ミュージック
発売日: 2015/11/03