俳優の綾瀬はるかが、11月9日に都内で開催された映画「ルート29」の公開記念舞台あいさつに登場。共演の大沢一菜(かな)、市川実日子、脚本・演出を手掛けた森井勇佑監督と、撮影時のエピソードを語った。
「レッドカーペットを歩けたのもうれしかった」
同作は、デビュー作の映画「こちらあみ子」(2022年)で数多くの賞を受賞した森井監督が、詩人・中尾太一の「ルート29、解放」からインスピレーションを受け、舞台となった姫路から鳥取を結ぶ一本道の国道29号線を約1カ月間旅し、脚本を完成させたロードムービー。他者と必要以上のコミュニケーションを取ることのできない一人ぽっちの主人公・トンボこと中井のり子(綾瀬)が、風変わりな女の子・木村ハル(大沢)を連れて旅に出た先でのさまざまな出会いを描く。
11月8日に公開を迎えた今作。撮影からこれまでを振り返り、綾瀬は「1カ月半くらいかけて鳥取で順番に29号線を旅するように撮っていたので、暑くて撮影が大変だった部分はあるんですけど、一緒に虫を捕ったり、大家族の夏休み、“ヌーの移動”みたいなのが思い出深いです。この作品で(東京国際映画祭)レッドカーペットを歩けたのもとってもうれしかったです」と独特の表現を交えながら回顧した。
また、以前から親交のある市川には撮影でいろいろ相談に乗ってもらったそう。綾瀬が「タバコを吸うシーンもあったんですけど、タバコを吸ったことがなかったから、(市川が)うちに来て一緒に歩きタバコのやり方を…」と話すと、市川は「『ちょっと見ててね!』って言って、(綾瀬がぎこちなくタバコを吸う姿を再現しながら)こうやって。『それ絶対吸ってない人だから!』って(笑)」と指摘したことを明かす。
照れ笑いしながら綾瀬は「指導してもらいながら『それ不自然じゃない?』みたいな(笑)。『じゃあ、この辺が自然?』って、一緒にやってもらいました」と、“演技指導”してもらったことを打ち明けた。
「すべてを委ねる境地に挑んでいました」
そんな綾瀬が今作で演じるのり子は、これまで演じて来た役柄とは少し違った魅力のあるキャラクター。役作りについては「これまではアクションだったら稽古を積んで、細かく厳しく、立ち位置まで決まっていて。(演じるキャラ的にも)積み上げていく作業が多かったんですけど、監督(の演出)はとにかく今までの20何年の経験をそぎ落とすという作業のような感じがして。無にならなきゃいけないんだなと。むき卵になった感じです。ただ、いるという。せりふも考えない。(森井監督が言うところの)宇宙からおりてきたらしゃべるみたいな。すべてを委ねる境地に挑んでいました」と、全く違うアプローチで臨んだことを伝えた。
舞台あいさつでは、綾瀬が手作りしたフォトアルバムを大沢にサプライズでプレゼントする場面もあった。
映画「ルート29」は全国公開中。
◆取材・文・撮影=森井夏月(STABLENT)