新種の人類“亜人”を演じた佐藤健「何回死んだか覚えてません(笑)」
2018年4月スタートの連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK総合ほか)への出演が決まるなど、話題作への出演が続く佐藤健。大ヒットコミックを映画化した主演作「亜人」(9月30日・土公開)では、死んでもすぐに蘇る新種の人類“亜人”の青年・永井圭を演じている。
――事故に遭い、自身が死なない“亜人”であることが発覚する主人公の永井圭ですが、役作りはどのように行ったのでしょうか?
僕自身、原作の「亜人」を読んでいて、実写化したいという思いはあったので、台本の打ち合わせから参加させてもらいました。やるからにはいいものにしたかったし、背負うものもありますから。それでどんどん形になって行く中で、圭のキャラクター像も具体的な形になっていきました。でも完璧に満足できる状態まで作り込むには、時間的にどうしてもクランクインに間に合わない。だから現場に入ってからも、このせりふはどうだろうとか監督とは話し合いを続けていました。思い付いたせりふを書いて本広(克行)監督にお見せして、取り入れてもらったり。演技の面では、アニメ版で圭を演じられた宮野真守さんの喋り方やトーンも参考にさせていただきました。
――圭は合理的でありながら、情にも厚い複雑なキャラクターですね。
基本的には、原作を意識しています。彼は合理主義ですが、感情が欠落しているわけではなく、人間の感情が不確かだとわかっている。だから目的を達成するには、感情に流されるより、感情を押し殺しても合理的に行動すべきだと信じているんです。原作でもそう描かれているので役に反映させました、そういう人物だけに、たまに感情が表に出た瞬間にぐっとくるものがあるんです。監督も、圭に対してそのあたりは狙っていたと思います。
――本広監督とはどのようなお話をされました?
一貫していたのはとにかくスピード感のあるアクションエンターテイメント作品にしたいってことですね。打ち合わせの段階から監督とはすごく相性合うなと感じましたし、そういう意味では信頼して入れた現場でした。
――実際に現場に入られていかがでした?
監督は撮影がとても早いんですよ。アクションが多いので、すごく過酷な現場でボロボロになるだろうと覚悟していたんですが、そういう意味では「もう終わりですか?」みたいな(笑)。もっとも僕が今まで体験してきた現場と比べてなので、実際に楽な現場だったかどうかは分かりません。でも、できるだけ役者に負担をかけないようにしてくれる監督なのは確かですね。
受けのアクションの苦労も思い知った
――アクション監督は「るろうに剣心」シリーズ(2014、2015年)でスタント・コーディネーターをされた大内貴仁監督ですが、どのようなお話をしたのでしょう?
確かクランクインの2カ月前くらいからアクションシーンの打ち合わせや、練習をはじめたんだと思います。とにかくアクションシーンが多いので、撮影に入ってからも話し合い、撮影直前ギリギリまで打ち合わせをしていました。大内さんとは信頼関係ができていたので、遠慮なくなんでも言える仲。スムーズだったし、最初の段階から100%の状態でできました。大内さんにとってアクションも芝居ですから、アクションは圭の気持ちや感情で組み立てる方なんです。だからアクションがかっこいいだけでなく、キャラクターとしてここはもう少しこうしたいとか僕も色々と言わせてもらいました。
――自分で命をリセットするなど“痛いシーン”も多いのですが、今回もほとんどスタントなしでやられていますよね。
普通は銃で撃たれたら致命傷になっちゃいますが、亜人にとっては被弾するということが違う意味で重要になってくる。逆にそれを活かして戦うのが、この作品の魅力だと思います。今回は受身を取ることが本当に多かったので、受けるアクションがどれだけ体に負担がかかるのかを思い知りました。「るろうに剣心」の時は割と攻めてばっかりだったので、あの時にはなかった苦しみでしたね。僕にとっては良い経験になりました。
――これまでにないアクションが多かったですね。
命を何度も繰り返すという設定を、戦法として取り入れた戦いは新しいですよね。亜人にとって怖いのは、被弾じゃなく眠らせられ捕獲される事。それを防ぐ為に自分で自分の命をリセットする。リセットも毎回同じだと飽きるので、リセット方法もアイデアベースで色々と出し合いました。自分の体越しに相手を銃で撃つとか、感電リセット、ナイフで切ったり高い所から落ちたり。何回死んだか、自分で覚えてません(笑)。監督の編集のテンポ感も秀逸で、すごく面白いシーンになったと思います。
――激しいアクションが多いですが、楽しむ余裕はあるのでしょうか?
基本的にアクションは楽しいですが、今回は特にワイヤーが面白かったですね。ただ跳んだり跳ねたりするだけでなく、たとえば欄干の柵の上を走るとかこれまでにないアクションでワイヤーを使っています。他にも空中で物をキャッチするために飛んだ後、キャッチした僕自身がIBM(=粒子を放出して戦わせることができる亜人だけの能力。人間には見えない黒い幽霊のような存在)にキャッチされるとか。頭脳的ワイヤーアクションという感じで、技術的には難しいんですが演じていてとても楽しかったです。
――CGで描かれたIBMとの絡みのアクションはいかがでしたか?
想像力をいかに使うかですね。基本的にはグリーンマンと呼ばれる緑の全身タイツを着たアクションマンがいて、最初にCGを合成する時の目安としてその人たちと撮影し、そのあと役者の本番はアクションマンに抜けてもらって何もない空間に向かって芝居をします。ですからIBMとのアクションは2回撮るイメージですね。CGはこれまでにも経験はありますが、完成した映像は想像以上のクオリティーだったので、役者としては本当に感謝です。
――今回は肉体改造にも取り組んだそうですね。
それに関しては、マストだったわけではないが、たまたま自分で体作りをしたいなという思いがあって、「亜人」は裸になるシーンがあるし丁度良いかなって(笑)。ジムに通ってトレーニングをして、あとは食事制限ですね。実は僕、27年生きてきて食事制限のようなことは一度もしたことなかったんです。ずっと食べたい時に食べる、みたいな感じで。いい機会だから、その帳尻を「亜人」の撮影2カ月で合わせてみようかなって感覚です。
――食事制限は大変では?
そうでもないですよ。(綾野)剛のトレーナーの方に教えてもらったんですが、賢いやり方があるのできちんとやれば簡単にできます。痩せるメカニズムを自分の身体で知ることができたし、理解できるといまどれだけ脂肪を燃焼しているのかも実感できるんです。ダイエット本、書けますよ(笑)。
――「亜人」に参加して、佐藤さんが得たものは何でしょうか?
どの現場もそうですが、いろんな経験ができるので得たものは多いと思うんですが、「これだ」って実感はないですね。ただ完成した映画を観たら、すごくスピード感があってラストまであっという間。今までにないアクションも撮れたし、疾走感があって、その疾走感を持ったままエンディングまで突っ走るところがすごいなって。そういう映画って、これまであるようでなかったじゃないですか。そんな映画を残せたことが、この作品で得られたものだと思います。
映画「亜人」
9月30日(土)公開
配給=東宝
原作=桜井画門/監督=本広克行/出演=佐藤健、玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈、浜辺美波、綾野剛ほか
大ヒットコミックを、「踊る大捜査線」の本広克行監督が映画化。命を繰り返す特殊な能力を持つ“亜人”が世界各地に出現。亜人であると発覚し、政府から追われる身となった永井圭(佐藤健)は、人類への復讐に燃える亜人のテロリスト佐藤(綾野剛)の存在を知る。
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