コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はダ・ヴインチwebで「ふたりの花火がちるまえに」を連載中の作者、鈴木日々喜さんがXに投稿された『ショートケーキ、いちごなし。』をピックアップ。
2024年11月7日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1.3万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、鈴木日々喜さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
なんでも1人でできるって思ってたんだけどな
友人の結婚式にパンツタイプのドレスを選んだ主人公のみのり。ショップで気に入って購入したのはいいものの、背中のホックは誰かに頼まないと留まらないし外せない…。なぜ“一人じゃ着れないドレス”を選んだんだろう…。
友人の結婚式だからなのか「今のままでも別にいい」と思っているのに、この日はなぜか悲しい気持ちになってしまう。でも…見方を変えるだけで現実は変わる。女性への応援歌ともいえるエンディングに「最後の文に心打たれました」「怒涛の共感」など多くの反響が寄せられている。
作者・鈴木日々喜さん「自分が生きてきて感じたこと、悩んでることを女性視点で描く」
――『ショートケーキ、いちごなし』を創作したきっかけや理由などをお教えください。
自分も、同じようなパンツドレスを着て、結婚式に出席したのがきっかけです。
ほとんど実話なのですが、人の手を借りないと着れないドレスを選択してしまった罪悪感と…じゃあ、独り身の私は諦めなくちゃいけなかったのかなという気持ちでいっぱいになっていた時に、見ず知らずのお姉さんがなんのも迷いもなく助けてくれたことによって救われて、「私は好きな服を着る幸せを諦めなくていいんだ!」と感動して、この話はいつか書かなくてはとずっとあたためていました。
あと、「1人で着れない服」というものに強い憤りを感じていたので、ずっとその答えを探していたから、というのもあります。
「結局人間はパートナーの有無に限らず本当の意味で1人では生きていけないので、助け合って幸せになるものなのだ」ということを味わって、それを描きたいと強く思いました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
やっぱり、見ず知らずの女性に背中のホックを開けてもらうシーンです。
どうしよう、と諦めた時に、ダメもとで頼んで受け入れてもらった時の一連の表情が見どころです。屈託のない笑顔や、些細な助け合いがどれだけ人を救うことだろう…!という気持ちを込めて描きました。
あと、1ページのパンツドレスあるあるの「トイレで全裸になって、何とも言えない気持ちになる」ところもおすすめです。
これは自分が着てびっくりした点だったので絶対描きたかったです。個室の中で全裸って、なかなかに心許ないんですよね。あの衝撃とか情けなさは着た人にしかわからないと思います笑
――作品の中でとくに気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
「なんでも1人でできるって思ってたんだけどな」というセリフが好きです。共感してくれる人も多いんじゃないかと思います。
別に1人で生きていけるし、パートナーがいなくても私は大丈夫って思っていたところに、1人ではどうしても解決できないことに出会ってしまった時の、悲しさ、虚しさというか…。
そのやるせなさが出ていると思うので、気に入っています。
――本作はコミティア150の新刊に入る予定の作品ということでしたが、他にはどのような作品が収録されているのか教えてください。
「主役になれなかった女性たち」の作品が収録されています。
このパンツドレスの話は結婚式という主役になれる日がおそらくこないであろう人の話。そのほかに、家族に事件が起きても関係なく終わっていく人の話、姫を拐った魔女の話を収録予定です。
どれもシスターフッドの要素も含んでいるので、「好きそうだな」と思う方はぜひ読んでいただけたらと思います。
――今後の展望や目標もお教えください。
自分が生きてきて感じたこと、悩んでることを女性視点で描く、というのは、もはやライフワークなのでこのままずっと続くと思います。
ですので、今後は新しく男性の視点のお話にも挑戦したいなと考えています。
あとは…是非コミックスを紙で出したいです。
夢です!頑張ろうと思っているので、応援していただけたら嬉しいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
現在ダ・ヴィンチweb様にて、『ふたりの花火が散るまえに』という、同じように結婚に対して考えた物語を連載中です。
今回のドレスの話が好きな方はきっと面白く読んでいただけると思いますので、是非読んでいただけますと嬉しいです。
また、すでに読んでいただいてる方は、これから結末へと向かっていく2人を最後まで見届けていただけたらと思います。