「ワシの人生、全部否定せんでくれや」
精神的に不安定になった五味は、その後も看護に来たナースの吉子(安達祐実)と柚子(森田望智)に当たり散らし、ガマンの限界を超えた柚子に「何でも好きに言えば?どーせアンタなんか、1カ月で死ぬんだから!」とブチギレられ、彼は思わぬ形で自身の余命を知る事となってしまった。
その夜、夜勤で病室にやって来た静に、「1カ月か…」と穏やかな表情でつぶやく五味。医師に事務的に言われた時は真実だと思えなかったが、柚子にハッキリ言われた事で覚悟ができた、と静に語った。暴言を吐いた柚子を五味の目の前でビンタした吉子にも触れ、上司に怒鳴られたり叩かれたりするのは自分の時代には当たり前で、それをバネに頑張ったのだ、と。「ハラスメントだの何だの面倒な時代じゃ。ワシの人生、全部否定せんでくれや」と、「田舎者だと思われないように捨てた」という広島弁で、五味は静に語るのだった。
五味のその言葉を受けて「病気を治す事は出来ないが、人を治す事は出来る」と言う静。「今から性根を治すと言うのか?」と尋ねた五味に「治してみせましょう!」とほほ笑み、2人の間に穏やかな空気が流れた。静の入れたお茶を飲み、ほっとしたような幸せそうな表情をした五味が印象的だった。
五味は暴言を謝りに来た柚子に「悪かった」と、それまでの言動を逆に詫び、院長の薬師丸にも「柚子は悪くない」と告げて彼女をかばった。
五味に残された日があと数日になったが、離婚して親戚とも疎遠、部下も「顔も名前も覚えてくれない上司に会う気は無い」と1人も来ない。孤独に旅立つのはあまりにも気の毒だと、静は“部下役”として柚子の配信のフォロワーを呼んでほしいと彼女に頼み、たくさんの“部下”が五味の病室に集まった。
「本部長!」と慕う“部下”たちに、五味は自分の担当だった契約の進捗を尋ねた。が、もちろん答えられる者など居ない。不穏な空気が流れた瞬間、「その契約は」と病室に入ってきた者が。五味の本物の部下、茶谷(中島広稀)だった。ひどいパワハラのせいで五味は社員に嫌われており、茶谷も理不尽な仕打ちを受けていたが、彼は仕事に対して真っすぐな五味を嫌いにはなれなかったのだ。
最期の時間に「しず坊」として寄り添った静
皆が去り、静と2人きりになった病室で、五味は「にぎやかじゃったのう」と彼に語りかけた。そして続けて「誰じゃ?アイツら。どっから連れてきたんじゃ」と言った。五味は分かっていた。ちゃんと部下の顔を覚えていたのだ。
「このウソつき」と笑う五味に、「バレとったか。さすがタケちゃんはだませんのう」と初めて彼に対して広島弁で返した静。最期の時は、ナースとしてではなく、「タケちゃん」の幼なじみの「しず坊」として彼に寄り添った。
「しず坊には、ナースがピッタリじゃ」と穏やかに感謝の気持ちを伝える五味。そんな彼の手を両手で包みながら「最高の誉め言葉じゃ」と静は礼を言うのだった。
交わす言葉は少ないながらも、お互いを思う気持ちや長年会っていなくてもすぐに昔のような関係に戻れる友情など、中井と段田、2人の名優の丁寧な演技によって心が動かされた視聴者が多く、「泣いた」「見応えありすぎ」「心が震えた」と胸熱コメントがSNSに並んだ。
今回、静が「しず坊」と呼ばれていた事が分かり、これまで「歩“ちゃん”」と呼ばれてイラついていた歩は反撃の武器を手に入れたかの如く大喜び。ナース仲間たちにもすぐに“告げ口”した。今後は「歩ちゃん」「何ですか?しず坊」といったやり取りが見られそうで楽しみだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
ポニーキャニオン