コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、11月9日にX(旧Twitter)に作者のHiromu。さんが投稿した『深海で息をする』を紹介する。Hiromu。さんがX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、4000件を超える「いいね」やコメントが寄せられた。本記事では、Hiromu。さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
息苦しい“深海”の正体
「その日、私は深海の水圧に負けた」という女性の独白から、物語がはじまる。家にいても、電車で移動していても、絶えず息苦しさを感じてしまう女性。彼女のまわりにはさまざまな深海魚が泳いでいて、でもそれは周りの人には見えていない。まるで彼女だけが、海の中にいるようだ。
病院に行っても解決しない、誰からも共感を得られない、それでも周囲からは空気がどんどん失われていく。そんなある日、ふと夜に空を見上げた女性はクジラが落ちてくる姿を見た。クジラが落下したと思しき場所へ向かうと、そこで驚きの光景に出会う…。
この漫画を読んだ人たちからは「深海魚好きとしてはたまらないです...!!!暗くて美しい絵のタッチも最高」「深海の生き方と結びつけるアイデアに驚きました!いろいろ考えさせられる作品ですね」「深海の魚たちも沈んできた鯨を見て、食べて、初めて深海の深さと過酷さを知るのかもしれない」「この世界観好きすぎる…」などのコメントが寄せられている。
「リアルに存在するもの」として描くこと
——『深海で息をする』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
魚やクジラのイラストを描き続けてきた中で、それらをモチーフにした漫画を描きたいと考えていました。特に、深海魚の幻想的なフォルムに魅了され、さらに深海の底に沈んだクジラの骨の周りに集まる、鯨骨生物群集の世界も表現したいという思いがありました。
そんなときに、自分自身が喉に圧迫感を感じて息苦しさを感じる状況に陥り、悩んだ経験がありました。この苦しさを糧に好きな世界を描き出せたらなと、これら2つのテーマを織り交ぜて漫画にしてみようと思いました。
——本作では、息苦しい社会で生活する主人公の気持ちを深海にいると表現している部分が非常に印象的でした。さらに、深海魚が細かい部分まで描かれているので世界観に引き込まれました。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
息苦しい世界を深海として表現してはいますが、苦しさを感じている本人にとってはリアルなことではあるので、深海魚たちを妄想や幻想の様には描きたくなかったです。
なので、実際にその辺を深海魚たちが泳いでいる様に、そこで本当に生きていると思って描くことに注力してしています。美しく幻想的な姿で泳ぐこともあれば、ちょっと怖い見た目やクジラを生々しく食べる様子も現実に存在しているのだと受け取って欲しいなと思って描いています。
——特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由とともにお教えください。
最後のクジラの全身の骨のシーンです。クジラは死んで終わりを迎えているのに、その周りには生物たちが集まって生きるために食事をしている。この漫画の終わりであって、登場人物たちの始まりでもある様に描けたかなと満足しています。
——普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
基本的にはストーリーより先に画が浮かびます。日常生活の中で「この場所にこんな光景が現れたら面白い」「こんな生物がいたら変だな」とよく想像して、その光景がどうして現れたのか、なぜそうなったのかを考えるのが楽しくて、それが自然とストーリーへと発展していきます。
その中から「この光景を形にして実際に見てみたい」「他の人にも見て欲しい」と描きたくなったものを描いて作品にしている感じです。あと着想を得ているというのかわかりませんが、好きな映画や音楽の空気感から刺激を受けると、刺激を受けた作品の内容に関係なしに何か描きたくなる衝動に駆られることもあります。
——Hiromu。さんの作品は、海の生き物が陸にいたりケツァルコアトルスが空を飛んでいたりと、現実ではありえない世界観がテーマのように感じます。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
生物を描くことが好きで、それらの生物が現実ではあり得ない形で日常に現れるという状況に魅力を感じています。「こだわった点」でも書いてはいますが、妄想や幻想としてではなく、どんなにあり得ない状況でも、あくまで「リアルに存在するもの」として描くことを意識しています。
あとその生物に感情が乗らないことです。何を考えているかわからない様に描いて読み手自身の解釈の余地を持ってもらえる様にしています。
——今後の展望や目標をお教えください。
イベントなどで「漫画を描いてみないか」「漫画は描かないんですか」と声をかけられ、今年から漫画を描き始めました。短いページ数からチャレンジをしてみて、思いの外反響もありました。
短編を描きつつ、まずはイベントなどで販売できる漫画本を作りたいです。漫画も描いてイラストのお仕事の幅も広げられたらなとも思っています。
——作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
会社員として仕事をしつつ半ば趣味の様な形で描いているので、作品を見ていただいたり、反応をいただいたりして感謝しております。SNSの更新頻度はとても低いですが、まだまだ描きたいものもたくさんありますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。