コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『生き残りの恐竜たち』を紹介する。作者のフチカビさんが、11月9日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、2万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、フチカビさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
営業が終了した博物館で、こっそりと動き出す恐竜の化石
「本日の営業は終了いたしました。またのお越しをお待ちしております」というアナウンスが博物館に響き、警備員の男性・水樹は「まもなく閉館いたしまーす」と声をかけて回っていた。そんな中、同じ警備員の先輩から「お疲れ」と声をかけられた水樹は、先輩に対して残っている業務は閉館作業だけになったため、先に控え室に戻って大丈夫だと告げる。すると、先輩は「じゃあお疲れ」と言って控え室に戻っていく。
残された水樹は先輩がその場を後にしたことを確認してから、博物館で展示されている恐竜の化石のもとへ向かう。大きな化石の足元までやってくると、「お疲れ様です」と化石に声をかけ、「お客様もいないので、もう動いても大丈夫ですよ」と続けた。すると、恐竜の化石はゆっくりと動き出し、呻き声をあげる。水樹は「疲れたでしょう」と労いの言葉をかけながら、動く化石に食べさせるために持ってきていた肉を差し出すのだった。恐竜の化石にとって、博物館にいることが良い事なのかを悩みつつ、水樹はその日は博物館を後にする。
翌日、勤務の為にやってきた水樹は、先輩からその日にシフトが一緒だった警備員が仕事を辞めてしまったという報告と、その原因は恐らく博物館に幽霊が出るという噂があるからだと聞き…。
この恐竜たちの漫画を読んだ人たちからは、「世の中には意外と潜んでいるのかも」「とてもよい異文化交流」「稀に見る完璧ブッ刺さり作品」「タイトルから想像できないあったかい物語」など、多くのコメントが寄せられている。
揺さぶられた感情を繊細に描き切る、フチカビさんの物語
――『生き残りの恐竜たち』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
普段料理を作ったり食べる動画を見ることが好きなので、それらを見て何か『食欲』をテーマとした漫画を描きたいなぁと思ったのがきっかけです。食欲と聞いて連想されるものは何だろうと考えた際に、弱肉強食の世界で生きている動物たちが浮かんだため、動物たちの剥製がたくさん展示されている博物館を舞台としてそれらを組み合わせた漫画を描こうと思いました。
――本作では、先輩が亡くなったお母さんに気づいたシーンが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
先輩が亡くなったお母さんに気づいた後に、自分の母親にかけた「オレはもう腹いっぱいだから、十分たくさんもらったから、とても食いきれないよ」という言葉です。普段は動物の肉を食べて腹を満たしていた先輩ですが、大嫌いだったはずの人間たちの優しさに触れることで、肉だけでなく優しさによって満たされていく先輩の変化に注目してもらえると嬉しいです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
普段あまり取り乱さず敬語を使っている主人公の水樹が、血だらけで自分の体を大事にしない先輩に対し感情的になって敬語じゃなくなるシーンです。優しい水樹が人のためを想って感情的になるシーンを入れたく、特に作画の中でも一番こだわったため印象に残っています。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
自分の好きな作品や音楽などから着想を得ることが多いです。私自身「この作品が好きだ」となる瞬間は登場人物自身の価値観やその登場人物の生き様に惹かれて好きになることが多いです。音楽に関しては、好きな歌詞があったらよくメモをとってその言葉を眺めることが好きなので、そういった普段の好きなものたちから無意識のうちに着想を得ているのかなと思います。
――フチカビさんの作品は、普段の生活ではありえないようなテーマが多い印象です。だからこそ何気ない日常について深く考えるきっかけをもらえると思うのですが、こうした物語のインスピレーションはどこからくるのでしょうか?
私は普段何気ない日常生活の光景やどうでもいいように思えることについてもとことん深く考えたり調べることが好きなので、気になることがあったらすぐに調べるようにしています。調べながらそれらを更に追求していくことで、新しい知識が蓄えられそこからインスピレーションが湧いているのかなと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
他にも描きたい創作漫画がいろいろとあるので、楽しみながらこれからも描き続けていきたいです!今は趣味として描いている漫画ですが、いつか自分自身の創作活動の輪がもっと広がっていけたらいいなと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
いつも見てくださったり、コメントなどありがとうございます!どれも大事に読ませていただいてます…!自分のペースで好きに活動することが多い私ですが、これからもあたたかく見守っていただけると嬉しいです!