コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家の丸岡九蔵さんが手がける『未来の居酒屋で、過去をなつかしむ…話』に注目しよう。
同作は、2020年から「ミステリーボニータ」(秋田書店)で連載されている『酒処 春來荘日乗(さかどころハライソにちじょう)』の第3話にあたるエピソード。近未来を舞台にした同シリーズは、ワケアリな女店主「お春」が営む「酒処 春來荘(ハライソ)」に訪れる様々な客の様子が描かれている。
以前丸岡さんのX(旧Twitter)に『未来の居酒屋で、過去をなつかしむ…話』が投稿されると、多くの関心を集めて1.4万もの「いいね」を獲得。そこで作者である丸岡さんに、同作を描いたきっかけについて話を伺った。
新参者から進められた謎のタバコ「スイート・メモリーズ」とは…
「酒処 春來荘」の常連である「社長」は、お春の手料理である「里芋とイカの煮物」に舌鼓を打っていた。すると、その様子を見ていた初来店の男性客が「社長さんでしたら もっと高級なもの 食べ慣れてるんじゃないですか?」と声をかけ、社長も気さくに「こういうのを食べたいからこの店に通ってるんだ」と返答する。
そして、社長は自身の過去をしみじみと語った後にお会計。そこで男性客は「お帰りの前に これ いかがです?」と言いながら「甘い記憶(スイート・メモリーズ)」というタバコを差し出す。彼いわく、政府の許認可済みのもので、吸えば“自身の楽しかった過去が増幅されてあざやかに感じられる”とのこと。
興味がひかれた社長は「会いたい人にもう1度会うこともできる」という言葉に後押しされ、試しに1本吸ってみると、過去に経験した様々な出来事が脳裏に浮かび、自然と涙を流すのだった。そして、2人はそれからも春來荘で会うようになり、その度に社長は例のタバコを彼に頼み…。
読者からは「ノスタルジーがある中にSF要素もあって読み応えがすごい」「お春さんが頼もしすぎる」といった声が相次いでいた。
作者の丸岡さんのお気に入りは「最後の酒盛りシーン」
――そもそもの質問で恐縮ですが、『酒処 春來荘日乗』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
もともと私は未来世界を舞台にした飲み屋マンガ『陋巷酒家』を自主製作しTwitter(現X)にUPしていました。それに注目していただいた秋田書店「月刊ミステリーボニータ」の編集者さんからご依頼いただき、同じような読み味の作品として『酒処 春來荘日乗』の連載を始めることとなりました。
――Xに投稿された『未来の居酒屋で、過去をなつかしむ…話』を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
連載媒体が少女マンガ雑誌なので、シリアスな展開でもあまりどぎつく重苦しくなり過ぎないように心がけています。未来世界が舞台なので、変に複雑な用語などは使わず、初見の読者にもわかりやすい作画を意識しています。
――『未来の居酒屋で、過去をなつかしむ…話』の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
作中で社長も店員の梨江ちゃんもつらく悲しい経験をしますが、何とか乗り越え前向きになれた最後の酒盛りシーンが気に入っています。
――同作は、戦後の雰囲気や戦時中の体験談が描かれており、戦争を知らない人にとって貴重な面があると感じています。実際に描く際は、何かを参考にしているのでしょうか?
本作はあくまで遠い未来の世界が舞台のマンガです。とはいえ作中に出てくる戦時中や戦後の雰囲気は実際に起きた歴史を参照して描いています。太平洋戦争についての記録や小説、映画、マンガなど今まで私が摂取してきたものを参考にしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
『酒処 春來荘日乗』をもっともっと多くの読者へ届けたいと思っていますので、今後も精進して読み応えのある作品づくりに励んでゆきたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
『酒処 春來荘日乗』はコミックス3巻、「コミックジャンブル」にて連載中の未来探偵マンガ『港湾巷談 はーばーらいつ』の電子書籍は1巻、自主製作の未来立ち飲み屋マンガ『陋巷酒家 うらまちさかば』も電子書籍で発売中です。新作にご期待いただきつつ、今後ともよろしくお願い致します!