亮子が“でっちあげ”で対抗する圧巻の裁判
さて事件はというと、検察側が指摘する闇バイト組織との関連への疑いと、颯の住居に侵入しても窃盗はしない“闇バイトごっこ”をしただけで、計画も谷口がしたのだと話す、対立する様相があった。
亮子は、事務所にまた突然やって来た粒来との会話から、検察側が、闇バイト組織の指示役である“キング”と呼ばれる男を起訴するために颯以外の3人にでっちあげの証言をさせていると見抜く。
粒来と今回の担当検事は旧知の間柄で、亮子が粒来の娘であると分かった検事に対し、「その弁護士、あんまりナメないほうがいいかもな」とくぎを刺した粒来。第6話での親子対決では圧倒的な力で亮子を負かした粒来だが、亮子の力は認めているのだ。
そのとおりに亮子は圧巻の法廷劇を見せた。まず亮子がつまびらかにしたのは、被害者であった橘のうそ。実は橘が副店長をしていたスーパーで颯もバイトをしていて面識があった。ただ、本当の証言をしなかったのは、橘が職を得るために現実にはいない妹の戸籍を作り、その妹になりすましていたからだった。
検察が知らないその事実を明かした亮子は「こちらに都合のよいストーリーを作り上げる。使える材料は全部使ってでっちあげる」という計画を実行。橘は、スーパーでのいたずらを注意した仕返しのいたずらだと証言した。実際にスーパーで素行を注意されたのは颯を除く3人だったが、罪をなすりつけられようとしている颯を救うための“ストーリー”だ。
亮子は裁判員裁判であることを利用し、臨場感で迫っていった。年齢がいくにしたがって難しくなる就労問題の悲しみに同情しているかのようなうそ泣きをして裁判員となっている一般人のもらい泣きと共感を呼んだ。
検察側の「異議あり」に対して、「事件の背後に隠れた動機を明らかにしていくことは社会の課題を浮き彫りにすることでもあります」という亮子の言葉はすばらしいものだったが、続いた「裁判は、単なる勝ち負けのゲームじゃないんです!」に「えっ」と驚いた杉浦には、これまでの亮子を知る見ている側としてもクスっと笑ってしまった。
その勢いで検察側がこの事件を利用しようとしているのではないかとも言った亮子は、見事に“ゲーム”に勝利して、颯は無実となった。
闇バイト組織を入口に、若者たちの素行や悩み、検察側の問題、就労問題、戸籍偽造と何層にも重ねる構成の面白さがあった。そんななか今回登場した“キング”の存在が鍵となり、粒来も絡むクライマックスへと亮子が進んでいくようで、ますます目が離せなくなった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部