コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、週刊ビッグコミックスピリッツで連載中の若木民喜さんの漫画「ヨシダ檸檬ドロップス」。
作者である若木さんが11月12日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、2,400件を超える「いいね」が寄せられた。本記事では若木さんに、作品のこだわりなどについてインタビューをおこなった。
晴れて京大生となった山川が陥った”恐怖症”とは…
主人公・山川は京都大学文学部の1回生。京都大学に入学して2週間が経った現在、「恐怖と憂鬱の日々」を送っている。理由は山川が入学早々、”京大生恐怖症”になってしまったからだ。山川は人より突出したことのない人生を送っていたが、一浪したのち晴れて京都大学に合格。しかし入学後に開催された文学部の茶話会で、明確な夢や目標を持って京大に入学した人たちと出会う。その流れで山川に「何しに京大へ?」と聞かれたとき、全く答えることができなかった。そしてこの日以来、”京大生恐怖症”になってしまう。
ある日、山川は京大唯一の女子レスラー・沢北陽子と出会った。沢北はザ・サンシャインキッドというリング名でプロレス同好会に所属している。この日は男子のプロレスサークルと屋外で試合をおこなっていた。沢北は人気絶大で「今一番有名な京大生」と言われている。そんな沢北に山川は衝撃を受けるが、この直後にとんでもない展開が待ち受けていた…
本作を投稿したX(旧Twitter)には「京大生向け小ネタ多くて面白い」「すごく京大生らしくていい」「ちゃんと比較的最近の京大事情が反映されてる」「やっぱり若木さんの漫画は面白い」「はやくこれになりたい」などの声が寄せられている。
「この話はラブコメでもあるのですが、自分探しの物語でもあります」作者・若木民喜さんに作品へのこだわりをインタビュー
――「ヨシダ檸檬ドロップス」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
自分が卒業しているということもあって、京大を題材に描くことを勧められたことは過去何度かありました。取材に行ったこともあります。しかし、卒業してから長く経って、自分の京大の思い出は通用しないだろうと思って、なかなか形にまでなりませんでした。しかし、今回、担当さんが京都大学卒業ということで、今の京大のことをよく知ってる人が身近にいるので、ボクはネタ出しの負担が少なくなり、「土地勘のある人間」として動けるので、これならいけるかも知れない、と思いました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
京大という学校のリアリティでしょうかね。京大は外からみたら奇人変人の集まりみたいに見られてますけど、なぜそういうことになるのか。その要因はつまり「立地」ということにあると思っています。京都の隅っこで学生が一緒に群れて暮らしている。その姿。「地方大学としての京都大学」、を描きたいなぁと思っています。幸い、京大回りの食堂や生協など、取材にも名前を使わせてもらうことにもすごく好意的で、学生の人にも手伝ってもらって、ディテールはかなり豊富かつ正確です。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
1巻の最初と最後にコメントされる「自由」という言葉です。「自由」というのはどういう言葉なのか、ボクたちは自由をどういう風に表現していくのか。カシオと陽子の二人が大学生活のなかで、自分をどういう風に定義していくのか。それは折田先生にアニメのコスプレをさせることとどう繋がっているのか…この話はラブコメでもあるのですが、自分探しの物語でもあります。
――京大を卒業されている若木さんと京大生の主人公・山川と似ているところや、共感できるところがあればお教えください。
1話に関しては、そのままと言ってもいいですね。ボクは高校生の時は容姿や振る舞いはともかく、自分の考えてることには疑問を抱いていなかったです。それが大学に入って出会った連中は、勉強ができるのは当たり前ですが、みな自分の考え方を持ってるし、それを人に伝える方法も確立されていました。批評的というか。そういう人達と話していると、自分がどんどん希薄になっていくというか。レベルの差を思い知らされましたね。ただ、ボクはそれで自分を変えることもなく1週間でもう学校サボってました。
――今後の展望や目標をお教えください。
長く続けることです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
30年前の京都大学の記憶じゃマンガにならないと思ってたのですが、様々な方の協力もあって、現代の京都と京都大学の姿を描くことが可能になりました。中心にあるのはラブコメですが、二人を通じて、京都と京都大学とという場所も描けたらいいなぁと思っています。楽しんでもらえたらいいですね。京都大学にも来てみてください。自転車が一杯見られますよ。ぼくらが学生の頃は「中国」と言われていたものです。
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