「何歳になっても臆さず挑戦する気概を持っていたい」
――デビュー40周年ということですが、いろんなことに挑戦されてきています。これまで歩んできた道は、ご自身が望んだ通りのものでしたか?
「思い通りか?」と言われると決してそうじゃないですね。デビューの時からそうなんです。僕は歌手をやりたかったのに渡辺プロダクションの社長だった渡邊晋さんから「お前は歌より芝居をやれ」といきなり言われました。「経験ないですよ」と言っても「教わればいい」って(笑)。それで映画とレコードの両方でデビューすることになったんですけど、20代から30代の半ばまで、途中10年以上は一切役者をやっていなくて、三池崇史監督から声をかけられることがなかったら、今もずっとやってなかったかもしれない。
――三池監督がきっかけをくれた感じですね。
そう考えると縁があったんでしょうね。それに、何事も経験していくことが自分のプラスになるんだと気付きました。たとえば、ナレーションの仕事を頂いて、それを勉強していくと、歌手としての自分にも役立つ部分があって。初めてのことをやると最初はうまくできなくて恥をかくことになるんですけど、実はそれが大事なんです。そこでの失敗が必ずプラスになるので。
だから、何歳になっても初めてのことに臆さず挑戦する気概を持っていたいし、恥をかくことを恐れない自分でありたい。この歳になって、まだハードルの高いオファーをいただけること自体がありがたいんです。それこそ映画「キングダム」のホウ煖なんかもそうです。器用貧乏みたいにならないように気を付けつつ、これからもいろんなことに積極的にチャレンジしていきたいですね。
――“恥をかくことを恐れない”という言葉にハッとさせられます。
やらないで終わるより、“やったけどダメだった”の方がいいとずっと思っているんです。やるかやらないかで悩んでいる間がもったいない。負けることを恐れるのも分かるけど、“負けてもいいんだよ”と。その負けによって得るものというのが確実にあって、どこかのタイミングできっと“勝ち”に変わっていくんです。
今は時代がだいぶ変わってきてしまって、失敗できない世の中になってきたのが若い人たちにとってはかわいそうだと思う。いろんな意味で、窮屈な世の中になっていて、チャンスは減ってきてるのかもしれない。でも、やっぱりトライすることによって、その時は失敗しても、“こうすればうまくいくんじゃないか”という考えも見つけやすくなっていくんです。だから、どんどん挑戦してほしい。攻めの姿勢を貫いてほしいですね。
「世間の波に流されてしまうのだけは絶対に嫌」ぶれずに歩み続けて40周年
――吉川さんの人生において、初めてのチャレンジは「上京」だったということですが、進学校に通って、水球選手としての将来も嘱望されていた中での決断ということですよね?
考えてみたら大それたことだったけど、なぜあんなことがやれたんだろう?(笑) 当時からあんな摩擦係数の高いやり方しかできなかったんです。もうちょっとうまいやり方があったんだろうけど、そういうのは自分には向いていないというか、昔より多少は知恵がついた今でも苦手なんです。
でも、なぜか自信だけはあったんですね。何の心配もしていなかった。自信の根拠があったとしたら、それこそ水球くらいですよ。まだまだ道の途中ではあったけど、若かった割に結果を出せていたから「これがやれるのなら他のことだってやれるはずだ」と思っていたんでしょうね。だから、あんな冒険ができたのかなと。
――昔から一貫して変わらない部分、変えてない部分を教えてください。
自分の中に、世間の波に流されてしまうのだけは絶対に嫌だという気持ちがあります。「朱に交われば赤くなる」という言葉がありますけど、「染められてなるものか」というのはいつも思っています。聞き分けが良くなることが「大人になる」ことなら、そんな大人の仲間入りはしたくない。世の中をうまく渡っていくという生き方がそもそも向いていないんです(笑)。
“清濁併せ呑む”ってことが得意ではないし、“石橋を叩いて渡る”くらいなら泳ぎが得意なんだからそもそも橋など利用せずとも、川を泳いで渡ってやるよ、という。良く言えば、“ぶれない”ということになるんでしょうけど、要するに根性が器用じゃないんです(笑)。自分でも融通が利かないやつだなと思うことはあります。
ただ、近年はおかげさまでいい歳の取り方をしているみたいに言っていただけることが多いというのは、それなりに長い間、僕が自分の思う“格好良さ”を追求してきたことが、皆さんに伝わったのかなと思います。ロックミュージシャンとして見得を切り続けてきたので、これからも貫き通すつもりです。
ユニバーサルミュージック
発売日: 2025/01/22
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