「女を解き放ちなさい」と言われる流奈
縛り付けず、自由さを尊重する流奈。20代の恋、そして結婚、離婚、不倫といくつもの愛を経験し、それがあったことで玲門と出会った今があると考えている。
でも、玲門もただ気まぐれなだけではなく、電話がかかってきて複雑そうな表情を浮かべながら「今夜出掛けなくちゃ」と言った流奈に対して、「どこに?」と気に掛ける。流奈は「珍しい。玲門がそんなこと聞くなんて」と言うと、「だって気になって。流奈にそんな顔をさせる相手が誰なのか」と玲門。不意に流奈への愛が現れた場面だ。
その流奈に複雑そうな表情をさせたのは、流奈の母・寿美子(銀粉蝶)だった。流奈の実家は名家で、貞淑な妻のように見えていた寿美子だが、流奈は父親に愛人がいると勘付いていた。そして自身の見合いの日に相手男性のことを「お父様みたいに頼りがいがあって、きっとあなたのことを大切にしてくださるわ、この先ずっと」と寿美子が語ったことで、流奈はたまらず家を飛び出したのだった。
寿美子は「私のような生き方はしたくないと思ってるんでしょう」と言いながら、いま幸せなのかと流奈に問い掛けた。「幸せです。いろいろな世界を見て、経験して、苦しんだり、もがいたりもしましたけど。でも、だからこそその分、いまの自由を気に入ってるんです」と流奈。
すると、「まだまだねぇ」と寿美子が言う。「女はね、女に生まれて、女のまま死んでいくの。一生、女の性(さが)から自由になんかなれない。嫉妬、欲望、執着。自分の内にうごめくものから目をそらしてはだめ。取り返しのつかないことになるわ」と話した。
実は、寿美子が貞淑な妻、母であり続けることができたのは、「女を開放できる相手がいたから」。まさかの告白に驚く流奈に、寿美子は「あなたも物知り顔でおすまししていないで、解き放ちなさいな、女を」とアドバイスした。
「女の性から自由になれない」という言葉は、本作の根底にあるものをギュッと凝縮しているかのようだ。自由なようで、そうではなかった流奈だけでなく、夫に執着がないように見える愛里紗も、離婚した過去があると明らかになった彩江子も、修への気持ちが高まっているまりもも、みんな何かが心の内にうごめいている。彼女たちの“性”がどう動きだすのか、ますます楽しみになった。
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◆文=ザテレビジョンドラマ部