松本若菜に続き、田中圭も圧巻の演技
もう一つの宏樹と冬月の修羅場。冬月も宏樹の言葉をうつむきがちにじっと聞いていたが、
「思い出におぼれて盛り上がりましたか?」と言われると、なんともいえない視線を宏樹に向け、「違います」と否定した。
「中学の頃の夏野(※美羽の旧姓)は、笑うときはいつもうそがなくて、ステキな笑顔だった。だけど…、再会したときの夏野は、うまく笑えてなかった。痛みを感じなくなるほど追い詰められていた。心がずっと泣いてて、ボロボロになって。だから…」と冬月。
モラハラをするようになって消えた美羽の笑顔が、冬月主催のフリーマーケットのときに戻っていたことを見ていた宏樹は、たまらず冬月の胸ぐらをつかんだ。
くやしさと、後悔もあっただろうか。宏樹の顔は悲しくゆがみ、「どうしても救いたかった」と冬月が言うと、さらに心の中からわき出るものを必死で抑えるような表情になった。
その後、冬月が娘の栞が自分の子だと知らないことに気付くと、ハッとして「帰ってくれ」と促した。
前回ラストに続いて固唾をのんで見守ったW修羅場の結末まで、冒頭から約7分に及んだ。悪女になると托卵を決めた美羽が、大切なものを守るために莉紗に反論する姿は悪女を再覚醒させたともいうような雰囲気だった。一気に空気を変えた松本の演技が光った。また、宏樹の複雑な心境を表情で見せた田中も圧巻だった。
自分のしたことが「薄汚い不倫」だったと目が覚めた美羽は、宏樹から申し入れされていた離婚を決意。そして宏樹も、さらに切ない決断をする。そこに向かう始まりとなる心の動きがぎゅっと凝縮された冒頭7分だった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部